Q. なぜ木材に防腐処理をするのですか?
A. 木材は比較的安価で豊富に存在する再生産可能な材料です.
しかし樹種によっては腐朽菌による腐れやシロアリの食害による被害を受けやすく,特に温度や湿度が高く地面や水に接する環境では顕著となります.そういった場所で木材をより長く,美しく使用するためには木材に防腐処理することがとても有効です.
また木材は金属やコンクリートに比べ製造時の炭素放出量をみると,単位体積当たり金属材料の数十分の一から数百分の一に過ぎません.そればかりでなく,木材の利用は一時的ではありますが,大気中の炭素を固定している炭素貯蔵型材料なのです.
今後の地球環境保全や資源問題などを考えたとき,大気中の炭酸ガスを吸収固定するのに大切な役割を担う森林資源を原料にしている木材をなるべく長く利用することはとても大切なことです.(YM)
Q. 加圧処理材とはなんですか?
A. 木材を密閉容器(注薬罐)中に入れ,加圧や減圧の操作を行って木材防腐剤を木材中に注入して製造された防腐・防蟻処理木材で,世界的に最も多く使われている処理効果の優れた木材です.(YM)
Q. 木造建築物が火に強いとはどういうことですか?
A. 木造建築には火に弱いというイメージがあります.
しかし,適切な断面を持った木材は意外に「耐火性がある」のです.断面が5×10cmの木の梁を,同程度の鉄やアルミとともに温度を上げていきながら強度の変化を観察したデータによると,
- 鉄は5分(約500℃)で加熱前強度の40%,10分(約700℃)で10%に,またアルミは3分(約400℃)で20%になり,5分以内に溶融する.
- 木の梁は,温度が上昇するにつれ徐々に強度は低下するが,15分(約800℃)以上になっても60%の強度を維持しており,はるかに鉄やアルミより丈夫.
木材は金属と違って高温でも軟化する事はありません.木材の強度が下がるのは,表面が焦げて,梁が細くなったからであり,木材内部の強度低下があったわけではありません.
特に,梁のように太い木材は,表面が焦げるだけで,内部まではなかなか燃えません(樹種によって違いますが,JIS-A1304の標準加熱条件では,炭化速度は0.6~0.7mm/分程度).
炭化した部分の熱伝導率は木材の1/3~1/2程度で,これが遮熱効果を発揮しますます燃えにくくしています.従って,木造建築は万一の火災時でもすぐに崩壊せず,避難時間を確保できるのです.
このことは,建築基準法でも認められていることです.
昭和62年に改訂された建築基準法では,このような大断面木材を使用した木造建築物の防耐火性能を評価し,一定の防火措置を講じた木造建築物に対し,木造建築物の高さ制限や,防火壁設置義務に対する緩和を認めています.
更に,「燃えしろ」が定められています.準耐火構造に用いる大断面木造の柱,梁に対し45分準耐火では35mm,60分,準耐火では45mmの燃えしろが定められています.
これらの値に基づいた燃えしろ設計と接合部の防火措置を行うことにより,火災による建物全体の倒壊を一定時間防ぎ,大規模な火災に至らない配慮がなされています.(KA)
Q. シロアリと普通のアリとはどう違うのですか?
A. シロアリはシロアリ目に属する昆虫で,ハチ目に属するアリとは系統的に非常に遠い位置にあります.むしろゴキブリに近い仲間です.
シロアリもアリも羽アリになり,またシロアリもその時は褐色あるいは黒っぽい色をつけますのでアリと見分けにくいことがあります.区別のポイントは,シロアリの羽の長さが4枚とも同じであるのに対して,アリでは前の羽に比べて後ろの羽が短いことと,胸とお腹の間が極端にくびれていることです.
わが国には,10種類以上のシロアリが生息していますが,住宅に大きな被害を及ぼしているのは,イエシロアリとヤマトシロアリの2種類です.イエシロアリは暖かい地域に,ヤマトシロアリは日本全土に分布しています.イエシロアリは加害力が激しく,コロニーも大きく,活動範囲の広い種類です.
シロアリは女王と王を頂点とし,職蟻と兵蟻などの階級で構成された代表的な社会性の昆虫です.(YI)
Q. 木材には,どうして腐りやすい木と腐りにくい木があるのですか?
A. 木材の腐りにくさの程度,すなわち耐朽性は密度や硬さなどによっても左右されますが,一番大きな影響を与えているのは抽出成分といわれている物質です.これは樹木の成長にともない,辺材(丸太の周囲の部分で白太と呼ばれる部分)から心材(中央部分で赤身部分)に変わっていく過程で,心材部分に蓄積されいく物質のことで,木の色や香りの元にもなっています.
抽出成分の種類と量が異なるため,木によって腐りにくさの程度に差が出てくることになります.一方,辺材には抽出成分はほとんど含まれておらず,また糖類やタンパク質という腐朽菌の栄養になりやすい成分が存在するため,どの樹種であっても原則的に腐りやすいといえます.
国産材ではクリ,ケヤキ,アスナロ,コウヤマキ,ヒノキ,ヒバが,外材ではチーク,ベイスギ,ベイヒバ,ジャラ,ボンゴシなどが,心材耐朽性の高い樹種です.
抽出成分には,テルペン,フェノール,タンニン,ワックス類などがありますが,βツヤプリシンはヒノキチオールとも呼ばれ,アスナロ,タイワンヒノキ,ベイスギ,ベイヒ,ネズコなどに含まれている抗菌物質です.(YI)
Q. 木材を日光や雨のかかるところに置いておくと,色が変わったり表面が粗くなってきます.どうしてですか?
A. 木材はその化学構造から非常によく太陽光を吸収する物質です.しかし化学成分によって吸収する光の波長が異なり,セルロースは太陽光に対して比較的安定ですが,リグニンや抽出成分は紫外線を吸収しやすい構造をもっています.リグニンは光分解反応によって低分子化し,その多くは水に溶ける形になります.そのため雨水によって容易に木材表面から溶けだし,それによってさらに内部も光分解を受けることになります.
結果として柔らかい早材部分を中心に分解が生じ,洗い出したように表面が粗くなってきます.これを風化と呼んでいますが,針葉樹の早材部の風化速度は100年間でおよそ5mm程度といわれています.また,風によって運ばれる砂や塵などによっても木材表面は傷つくため,海岸部の住宅の下見板などは大きな風化を受けます.
屋外に置かれた木材は,初期の段階では濃色の材は明色化し,淡色の材は暗色化する傾向にあります.その後,薄い灰色からカビの付着による黒色のシミが発生し,これが増加して最終的には全ての木材は樹種に関係なく暗灰色化してきます.塗装は木材の耐候性を向上させますが,透明系の塗料は紫外線を通過させるために顔料を含んだものに比較して塗膜劣化を起こしやすいといえます.(YI)
Q. 天井や壁,家具などの表面に小さな虫穴がいくつもあいて,その近くに木粉が落ちていました.シロアリでしょうか?
A. 新築後や新しい家具などを入れたあと1~2年ぐらいの時期に,直径1mmあるかないかぐらいの丸い小さな穴があけられたら,それはヒラタキクイムシによるものの可能性が高いと考えられます.
ヒラタキクイムシは,広葉樹材のうち,ラワンやナラなどの乾燥した材を食害する虫で,これらの木材の辺材部(丸太の外側の方の,樹種にもよりますが白っぽい部分で,白太とも言う.)の道管の中に卵を産みつけます.卵から孵った幼虫はおおよそ10ヶ月以上の間,辺材部に多いでん粉を栄養にしながら食い荒らしたのち成虫となり,前述のような穴をあけて出てきます.そして,外に出た成虫は10日ぐらいの間にまた,同じような場所に産卵しますので,このようなサイクルで被害が発見されることになります.
ヒラタキクイムシは,シロアリと違って先にあげたような樹種のうち乾燥した材の,でん粉の豊富な辺材部だけを好んで食べるというのが特徴です.
辺材部しか食害しないこと,辺材部でも幼虫の栄養となるでん粉は新しい材ほど豊富なこと,成虫は幼虫のえさとなるでんぷんを確認してから産卵すること,などから,被害は3年目以降終息に向かうのが一般的です.
また,ラワン材を用いた合板の被害も聞きますが,乾燥材しか食べないことや合板の製造工程から考えると,仮に産卵されるとしても製品となった後であり,辺材部しか食べないことからも合板を構成する薄い単板自体が幼虫のえさとしての食害の対象になることはまれであると考えられ,むしろ被害の多くは隣接する材から成虫が出てくる時の脱出孔としてあけられたものであると言えます.
成虫は合板に限らず,洗面化粧台やバスユニットなどの表面材のプラスチックなどでも,小さな穴をあけて出てきます.
このようなヒラタキクイムシの被害を防ぐため,ラワン材やナラ材などの製材,フローリング,合板類などには,JASの防虫処理(製材関係では「保存処理K1」という)製品があり,特に被害の多いラワン材などには,これらのJAS品の使用をお薦めします.
ただ,最近は健康志向などから,効果の高い防虫薬剤の使用が嫌われがちなことや,合板などでは(防虫薬剤ではありませんが多少その効果のある)ホルムアルデヒドの放散を抑える努力が各メーカーでなされていることもあってか,一時期あまり耳にしなかったヒラタキクイムシの被害をまた聞くようになっていることも事実です.
被害に気づいたら,虫穴や,できれば壁・天井などの裏側で本当に食害されている材の表面などに,市販の家庭用殺虫剤でかまいませんので,注入したり吹き付けたりしておけば,その後の被害は最小限に抑えられるはずです.(HY)
Q. 最近抗菌加工やぬめり・黒ズミ防止等の表示のある台所・風呂用品が増えています.特に風呂用品などは表示のないものを探すのが難しいくらいです.その効果はどのくらい期待できますか?
A. まな板やスポンジ,洗面器などのプラスチック製の台所・風呂用品には「抗菌」などの表示があっても,その内容を保証するような基準はありません.
実験室的なテストで抗菌効果が高かったまな板に薄めた肉汁をつけ,細菌の増減を調べると,テストでは効果のあったまな板でも,無加工のまな板と同様に菌が増殖します.すなわち,抗菌効果があっても表面に汚れ(菌にとっては栄養)が付着すれば効果は発揮されないということです.もちろん,まな板に接触した食品の菌を死滅させるような効果はありません.
繊維製品には選択の目安となる「SEKマーク」がつけられていますが,プラスチックや木材製品にはこのような基準はなく,一定レベルが保証されている訳ではありません.
一部の木材には抗菌作用や防かび効果を有する成分を含む物もありますが,十分に効果を発揮するか否かは一概にいえません.実際の使用でその効果が発揮されるためには汚れを取り除く必要があります.
つまり,普段の手入れは無加工のものと同様に行う必要があり,汚れの多い台所や風呂用品には,抗菌加工と云うだけで信頼しすぎるのは危険です.(MM)
Q. ヒノキに含まれている「ヒノキチオール」の効果について教えて下さい.
A. 実はヒノキには「ヒノキチオール」がごくわずかしか含まれていません.ヒノキ自身のヒノキチオールの効果はあまり期待できないでしょう.
日本では,ヒノキチオールは昭和10年代に「台湾ヒノキ」の成分分析の過程で発見されたので,この名前が付けられたのだと思われます.学名は「ツヤプリシンthujaplicin」で,ネズコ,アスナロ,ヒバやベイスギに含まれており,特に青森ヒバには多く含まれていることで有名です.
ヒノキチオールは抗菌作用を持つことで有名になっており,青森ヒバから抽出分離した物が繊維類の抗菌剤として利用されているようです.(MM)
Q. 木材が水中では腐りにくいのはなぜ?
A. 木材を腐らせる腐朽菌は,おもに白色腐朽菌,褐色腐朽菌です.これらが活動するには空気が必要で,水中では活動があまりできません.
その他に水中で活動する腐朽菌もありますが,腐らせるスピードも遅く,それほど腐朽の原因にはならないのです.(KA)
Q. 木材(特に伐採直後)を水中に貯蔵すると乾燥しやすくなると言われますが本当?
A. 木材を乾燥し易くするには,水蒸気の抜け道を確保してやる必要があります.すなわち,通気性をよくする必要があるわけです.
マツの場合,樹脂が詰まって通気性を悪くしていますが,水中貯木により樹脂と水が入れ替わり,通気性が良くなって乾燥しやすくなります.
その他の樹種でも,水中で活動する細菌が細胞壁の一部を破壊するため通気性がよくなって,乾燥しやすくなります.(KA)
Q. 木材や住まいの防腐・防蟻処理について教えて下さい.
A. 木材に腐朽やシロアリ被害などの劣化が生じるためには,適切な温度と水分が必要です.このうち,温度は15℃以上になれば腐朽菌や虫の活動が活発になります.一方,水分条件は,住宅に関しては意匠や工法,あるいは住まい方によって支配されることが多いため,工夫によって劣化の危険性を低減させることも可能です.建立から永い歴史をもっている日本の寺社建築では,耐朽性のある樹種の使用とともに,水への配慮をした建て方と十分な保守管理によって耐久性が確保されてきたともいえます.
住宅に作用する水分・湿分には,雨水,生活用水,床下湿気,結露水などが考えられます.雨水については,屋根の勾配や取り合わせ部分に配慮するほか,外壁の仕上げ材や目地の亀裂部分,樋の接合部やオーバーフローも注意を要するところです.生活用水については,台所,洗面所,トイレなどの水栓やシンク廻り,浴室では浴槽と壁との取り合い部が水分の侵入個所としてあげられます.
床下湿気については,適切な通風孔の配置や防湿対策が大切です.せっかくの通風孔も物を置いてふさいでしまっては何の役にも立ちません.
結露は外気温度が下がり,室内や壁内が露点温度より低くなった場合に発生します.したがって,壁内結露を防ぐためには,水蒸気ストッパーの防湿層を断熱材の室内側に設け,外気側に空気流通層をつくることなどが効果があります.
しかし,現在の住宅は水回り箇所の分散や高気密・高断熱,さらには耐久性の低い樹種の使用など,場合によっては腐朽やシロアリ被害が促進される状況がみられます.現状においては,工法や保守管理だけで長い耐久性を維持するのが困難なのが実状です.
木材を薬剤で防腐・防蟻処理する方法には,木材中に薬剤を圧力をかけて注入する加圧処理と,塗布や浸せきによる表面処理とがあります.耐久性の点では,より深く薬剤が浸透した加圧処理の方が高い性能が保証されています.いずれの方法でも,仕口などの加工をすませた最終の形にしてから処理をすると高い効果が得られます.とくに,加圧処理した木材でも内部まで薬剤が注入されていないことがあるため,現場で加工した部分には十分に薬剤を塗布する必要があります.
加圧処理用の薬剤としては,従来は油性のクレオソートや固着型の水溶性無機系防腐剤であるCCAが用いられてきました.しかし,最近では匂いや廃棄処理に伴う問題のため使用量は低下し,ナフテン酸亜鉛やナフテン酸銅のような油溶性防腐剤,アルキルアンモニウム化合物やアゾール系化合物のような有機系防腐剤と銅やホウ酸を合わせた薬剤に変わりつつあります.加圧処理用の薬剤の種類や注入量などは,JASあるいはAQで認証されています.
シロアリに対する住宅現場での防蟻処理については,木部の処理と土壌の処理とがあります.土壌の処理は,わが国の主要なシロアリが地下生息性の種類であるため,床下土壌を薬剤で処理することで住宅内部への侵入を防止しようという目的で行われます.防蟻薬剤としては従来有機リン化合物が用いられてきましたが,最近ではピレスロイド系薬剤などに移行しつつあります.また,薬剤の剤型もいろいろな種類のものが開発されており,薬剤による土壌処理のかわりに防蟻シートやコンクリートスラブを用いる方法など手法も多様化してきています.(YI)
Q. 木材に穴を開け,粉を出して加害するヒラタキクイムシについて教えて下さい.
A. ヒラタキクイムシの成虫は,普通5~7月に被害材の表面に直径約2mmの円形の穴を開け,木の粉を排出して脱出します.雌は交尾したあと乾燥した木材の表面に現れた道管の中に産卵管を差し込み卵を産みます.ふ化した幼虫は孔道を開けて進みながら木材を食害して成長します.秋に成長した幼虫は,材の表面近くにきて冬を越し,春にサナギになります.サナギは1~3週間で褐色の羽化した成虫となり木材から脱出します.これがヒラタキクイムシの1世代,すなわち1年です.
ヒラタキクイムシの加害される木材は,まず栄養となるデンプンを多く含んでいること(ですから辺材のみ加害対象となる),産卵管が差し込める大きさの道管をもっていること(したがって,ラワン,チーク,カシ類,ナラ類,ケヤキ,竹類が加害され,針葉樹材は原則的に加害されない),乾燥していること(含水率は16%前後が最適とされる)が条件となります.
被害の予防法としては,防虫薬剤の塗布・吹き付け,加圧注入,接着剤への混入処理が行われています.塗装は産卵の穴となる道管をきっちり充填するように行えば効果がありますが,見えない面も含めて塗装しなければ意味がありません.また,十分な熱処理は,材中の虫を殺す効果的な方法ですが,これは予防法ではないため,温度が下がれば再度加害される可能性がでてきます.(YI)
Q. 最近,木炭の床下調湿材が注目されているようですが,いかがでしょうか?
A. これは,床下環境の湿度を低下させることによって,高湿度条件を好むカビや腐朽菌あるいはシロアリの発生を防ごうという意図で行われます.
実際の住宅について,木炭調湿材を敷設した場合と敷設しないケースについて,長期間にわたり床下気象環境を測定する実験が各地で行われました.その結果,地域性,住宅の構造,敷設方法などによって明らかな差異が観察されるときと,顕著な違いが認められない場合がありました.しかし,いずれにせよ,木炭を敷設してからの年経過とともに床下環境は改善されているのは事実です.
木炭は水を浄化するはたらきや脱臭作用をもっていますが,吸着性能は炭化温度によって大きく影響されます.床下調湿材としての木炭は,500~600℃で焼いたものが推奨されています.大きさは数mm~5mm程度のものが良いようです.
木炭は,最初の乾燥重量の10%あるいは報告によっては20%まで水分を吸着することが可能で,また,容易に放湿し,繰り返し吸湿と脱湿が可能であるという特徴をもっています.このことも住宅の床下環境の制御材料としての木炭が有利な点です.また,木炭の低い熱伝導率(約0.06Kcal・hr・℃)も,床下の結露防止に寄与しているといえます.(YI)
Q. 木の種類の中で毒性があるものや,かぶれをおこす種類のものがあるかと思いますが具体的にどんなものがあるのでしょうか?
A. 木も生き物ですから,自分に対して有害なものから守ろうとします.どんな木でもやっているのが,心材を作るという行為です.
丸太を切り口から見ますと,木は周辺部の2-3cmのみが白くなっていますがこれが辺材と呼ばれている木の若い部分で,水や栄養分を通しているところです.この部分のみが木で生きているところなのです.この部分は木も柔らかく栄養もあるので白蟻を始め黴や菌がもっとも好む部分です.
木としては食われてばかりでは倒れてしまいますので,表面部分以外は木の細胞の中に虫や菌に食われなくするためにフェノール類の物質を沈着させ赤味を帯びます(心材化).しかし死んでも木を支えることはできますので,心材は木を支えるだけのために存在していることになります.しかしさすがに死んでしまった心材でもそれが何百年も経つと腐ってしまって,木の真ん中が空洞になったりすることがあります.よく大きな木で真ん中が完全に腐ってからっぽなのに生き生きとしている木がありますが,樹体を支えるには周辺部が有効なので全く大丈夫なのです.肥大成長には樹皮のすぐ内側の形成層細胞が主役を担っています.
ところで,どんな木でも生き残るために毒が有効なら持ちたいのはやまやまですが,すべてうまく持てるとは限りません.しかし進化の過程でいくつかの木は持つことができました.ヒノキ(桧)のあの独特の匂いは黴をよせつけませんし,クスノキ(楠)の強烈な匂いは防虫剤として使われています.チークは木の中の独特のオイル成分が腐ることを防止しています.これらは広い意味では毒です.
木はその進化の過程で微生物と徹底的に戦ってきました.それ故,ほとんどの木の心材は微生物には敵対的です.しかし動物に関しては,木の実を食べて,種を運んでくれたり木にとっては持ちつ持たれつの関係でほとんどの場合は友好的な関係を結んできました.しかし中には動物に対して敵対的な行為をするものもあります.例えばうるしの木は‘かぶれ’ますし,桧系統の木は製材の時のオガ屑は喘息を起こしたり,人によってはかぶれたりします.アフリカ材のマコレという木は木の中にシリカを溜め込んで製材の刃物はボロボロにするは,オガ屑は猛烈なアレルギー反応を生じさせるはで,徹底的に自分が加工されることに抵抗します(しかし加工されてしまえば高級な家具に使用されたり,あきらめの早い木?です).
・・・ということで,我々が日常使っている木には広い意味での毒があります.しかし木材に使用されている防腐剤など人工的な毒と比べて木の毒というのは大きな違いがあります.基本的に木は自分を守れば良い訳ですから,防虫性は持っていますが,殺虫性は持っていないということです.例えば楠から作った樟脳をいつも洋服ダンスに入れていたから,体内に毒が蓄積されたり,漆職人は漆の毒が体内に蓄積されるということはありません.実際,製材所で朝から晩までオガ屑を吸っていた人が何年働いていても体を悪くはしませんが,石やセメントを扱っている人は長い間の労働で肺が機能しなくなったり防腐剤や殺虫剤を扱っている人が,段々その毒が体内に蓄積されそれが人体の器官を犯したり,ホルモンバランスを崩したりします. (KN)
Q. もや(母屋)についてお尋ねしたいのですが,現在大屋根の家を建築中の施主です.設計士さんに設計をお願いし,同市内の工務店に建築を依頼しています.大屋根を支える母屋が15×20センチの角材なのですが,その母屋約20本が,破風板より10センチほど突き出ております.他の人から腐るといわれていますが,本当でしょうか?もし腐るとしたら,どのような工事をしたらよいのでしょうか?
A. 母屋が破風・鼻隠より突き出ているというのはあまりないことで,デザイン上そうなったのだと思うのですが,腐る腐らないは一番に木の種類によります.防腐剤が加圧注入されている木材,または腐りにくい木材だと,幾分安心です.また,雨がかかっても直ぐに乾燥するような使い方をしていれば,よいのですが. (KN)
Q. 輸入製材または輸入丸太で防腐・防虫剤の処理の無いものというのはありえるのでしょうか? 検疫の点から,こうした薬剤処理のないものは輸入できない気がします.従って,これを製品化したものはすべからく防腐剤の影響を受けているものといえると思うのですが.
A. 外国から輸入された木材は,検疫で燻蒸しますが,これは塗布するとか注入とかとは違います.表面組織のみに一時薬がついた状態です.バルサン等で家の中を処理するのと同じです.したがって木材に防腐処理剤を塗布するか,注入しない限り無垢の木材は健康面では問題がまったくないと思います. (KN)
Q. 屋外で使用したいあずま屋に向く木材にはどんな種類がありますでしょうか? また注意点などがございましたら教えていただけますか?
A. いくつかの答えがあります.価格と雰囲気と耐久性のバランスが問題です.あずま屋の場合は基本的に垂木や桁に雨がかからないので,雨がかかったり地際の常時湿潤になる柱の材を何にするかがポイントになります.通常は次のようにしています
・価格を安くしたい場合:加圧注入防腐されたスギを使用します.これより耐久性は劣りますが,ヒノキの磨き丸太を使うこともあります(この場合は完全に和風になります).
・耐久性を重視する場合:金属の柱に木材をラッピングします.この場合には,ある程度耐久性があり狂いが少ないことからレッドシダーやレッドウッドが使われます.デザインと取りつけ方法のバランスが非常に大事になりますので,通常は専門業者が設計します.
以上をまとめますと,
・柱に使われる材:スギの防腐処理材(角材・丸加工材),ヒノキ磨き丸太,レッドシダー,レッドウッド,金属心材に木材のラッピング
・桁や垂木材:スギ材(柱のついでに防腐処理することが多い),レッドシダー,レッドウッド,ベイツガ(米栂),ベイマツ(米松).ヒノキ(桧)の場合は桁にすると非常に高いので使っても垂木のみです. (KN)
Q. 海釣り護岸(半潮部)にデッキ材を検討しております.淡水では半潮部での利用は避けるべきだと思いますが,海水では半潮部であっても海水に腐朽菌を殺す作用があると人から聞きました.本当なのでしょうか?
A. 海水と淡水とでどちらが腐食しやすいかということに関して,学術的なデータは持っておりませんが,例として,USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)の工事を施工した木材企業が,アメリカの防腐処理会社からラグーンに突き出す形のメインデッキについてはラグーンが淡水であったので問題ないが,もし海水であればより耐久性の高い薬剤を使わねばならないという勧告をうけております.したがいまして,海水の方が腐りにくいというのは本当ではないように思います. (KN)
Q. なぜ木材の乾燥が必要なのですか?そのメリットは何ですか?
A. 木材は乾燥すると寸法が縮む性質があります.私たちが生活する住宅では,新築後まもなく柱と鴨居,柱と敷居の接合部分に隙間が生じたり,板張り壁の継ぎ目が透いたり段差ができたりします.きれいな柱面に割れも出たりします.また,建築後しばらくすると,釘や接着剤で留められている床材や階段の踏み板がずれて,歩くたびに床鳴りがしたり,さらに時間が経過すると,ドアやふすまなど建具類の開閉時にきしみを生じ,壁面のクロスに亀裂が入ることもあります.さらに,木材中の水分(多くの場合,弱酸性から強酸性の範囲を示す)で構造強度を保持する緊結金具を腐食させることも報告されています.これらのトラブルの多くは,木材中の水分および乾燥に伴う寸法変化に原因します.
昔は建築に多くの時間を費やしていたため,建築中に木材が乾燥していました.したがって,乾燥による寸法変化は建築中に修正できたため問題は発生しませんでした.近年は建築部材のプレカット化や合板やボード類による乾式工法によって建築工期が著しく短縮されたため,木材は未乾燥なまま建築が完了し,入居後に乾燥によって前述のトラブルが生じてきます.消費者からのクレームがあまりにも多いと,在来工法の木造住宅に対するイメージは大きく低下します.
製材業界が十分に乾燥された木材を流通させることによって,住宅のトラブルやクレームは減少し,木造住宅の信頼性回復と着工数増大,ひいては国産材需要の拡大につながります. (YT)