木材の基礎的性質– 木のはてな?(Q&A読み物) –

    Q.木材の特徴を教えてください。

    A.木材は家具、用具、建築など様々な形で、私たちの生活環境の中で多く使われています。太古の昔から、人間にとって最も使いやすく、なじみの深い材料です。

    このように重要な材料となっている木材には、金属、プラスチックやコンクリートのような他の材料に見られない特徴として次のようなものがあります。

    1. 加工しやすい
    2. 軽いわりには強度がある
    3. 熱、音、電気を伝えにくい
    4. 水分を吸ったり、吐いたりする調湿作用がある
    5. 腐りやすい
    6. 燃えやすい
    7. 性質が方向によって異なる、いわゆる異方性がある
    8. 分類学的な違い(樹種)が性質の違いになって現れる
    9. 性質が同一樹種内でも変動しやすい

    木材を使用する際には、以上のような特徴を知っておき、十分に注意する必要があります。

    集成材を含むほとんどの木材製品の規格は、日本農林規格(JAS)で定められています。(TK)

    Q.木材の含水率について教えてください。

    A.水は木材の一部です。

    水をどの程度含んでいるか、絶えず注意を払わなければなりません。そこで、以下のように含水率を定義し、その値に応じて木材を呼び分けます。

    含水率(%)=(水の重さ/細胞壁の重さ)×100

    生材:伐採後,乾燥していない状態の木材

    気乾材:生材を大気中に放置すると、次第に水分を失って乾燥し、やがて一定の含水率になります。その段階の木材を気乾材といいます。気乾材の含水率は樹種によらずほぼ一定ですが、地域によって異なり、また季節によって変動します。値は11~17%で,平均15%です。

    全乾材:換気のよい乾燥器の中で温度100~105℃で乾燥し、一定の重さを示すようになったときの材です。もちろん含水率は0%です。(TK)

    Q.ヒノキなどの木材は、伐採後2~300年後も強度が増す・・・といわれています。どんな要因が働いてそうなるのですか?

    A.木材中のセルロースの結晶化度が200~300年ほどは上がってゆくので、それに伴って木材の強度もわずかながら増加してゆくと考えられています。

    オールド・バイオリンがよい音がでるのも、200~300年は結晶化度が上がって、弾性率が高くなりかつ振動時の内部損失も小さくなるためであろうと考えられています。(MM)

    Q.先日、本屋で、木材関係の本を買いました。今まで知らなかった木の不思議が紹介されていておもしろかったです。でも、専門用語が分からないのです。ちょっとづつでも勉強したいと思っています。ちなみに、セルロース、リグニン、ヘミセルロースってなんですか。できたら簡単に教えて下さい。

    A.いくつかの大学には、農学部の中に、木材を専門に扱う領域があります。本当に興味があるのなら、大学進学の際には是非検討してみて下さい。

    それでは、質問にお答えします。

    セルロース

    自然界に最も多く存在する有機物ですが、糖(グルコース)が1万から1万5千個も直列につながってできた長い繊維状の分子なのです。これを化学の言葉で言えば、「グルコースが脱水縮合によって生じた線状化合物(高分子多糖)」となります。セルロースは木材の引っ張りに対する強さやしなやかさを担っています。ここで、グルコースとは、炭素原子5個と酸素原子1個からなる六角形の骨組みに4個の水酸基(-OH)と1個のオキシメチレン基(-CH2-OH)がくっついたもので、このグルコースの特定の2個の水酸基を使って、六角形の板が一枚ごとに裏返しになるようにつなげる(脱水縮合する:β1-4結合)とセルロースができます。これに対し、グルコース(六角形の板)をすべて同じ方向につなげる(α1-4結合)とデンプンができます。私たち人間は、α1-4結合を分解する酵素を持っていますので、デンプンを消化することができ、デンプンは食料となります.。しかし、セルロース(β1-4結合)は分解できないので、人間にとって栄養価値はないのです。それでは、なぜ、シロアリは木材を食べられるのでしょうか? 彼らの腸の中には、セルロースを分解する微生物が共生しています。その助けによって、木材を栄養素として利用することができるのです。

    リグニン

    ベンゼン環と炭素原子3個からなる鎖が基本構造で、これらは複雑な三次元の網目構造を持っています。リグニンは、木材のかたさや曲げに対する強さを担っています。木材が草と違ってかたいのは、細胞壁にリグニンが詰め込まれているからです。さらに、細胞と細胞を強固に接着しているのもリグニンの役目です。リグニンが細胞壁と中間層に供給されることを「木化」を呼んでいます。

    ヘミセルロース

    基本的にはセルロースに似た物質です。ただ、縮合する部分がセルロースと違うところがあるので、枝分かれしています。鎖がつながる長さもセルロースに比べると短く、また、グルコースだけでなく、数種の異なる単糖によって構成されています。半分(ヘミ)くらいセルロースの構造や性質を持っているのでヘミセルロースと名付けられたようです。ヘミセルロースは、セルロースとリグニンを結びつける役目を担っています。

    もっと詳しく知りたいのでしたら、また、連絡して下さい。待っています。(MI)

    Q.樹木を輪切りにすると「年輪」が現れますが、年輪はどのようにしてできるのですか? 教えてください。

    A.幹が太くなるのは分裂組織の活動の結果ですが、分裂活動は1年中行われているわけではなく、例えば日本では、春から秋口にかけての、比較的短い期間に限られています。

    しかも分裂の初期に作り出される材と後期に作り出される材とでは、細胞の形や大きさ、場合によっては細胞の種類まで違ってきます。

    そこで、初期にできた材を早材(そうざい)、後期にできた材を晩材(ばんざい)と呼んで区別しています。早材を春材、晩材を夏材ともいいます。

    樹木を輪切りにすると、早材から晩材への移行の様子がよくわかります。このような様子は、木材の成長(肥大成長)そのものです。

    1成長期間中に形成された環状の層を成長輪と呼んでいますが、日本のような温帯地域では普通1年を秋期とするので、年輪といいます。(TK)

    Q.節について教えてください。

    A.樹幹の肥大成長によって、枝がその材中に包み込まれた部分を節といいます。

    枝をもたない樹木はなく、大型の高木で幹の外観に枝の痕跡が全くない場合でも、幹の内部にはかつての枝が必ず包み込まれています。

    この幹に残った枝が節です。

    節は大きく、生節(いきぶし)と死節(しにぶし)に分けられます。

    生節:枝が生きている状態のときのもので、周囲の組織とのつながりがあり(枝の形成層は幹のものと連続している)、離れない健全な節である。堅節ともいう。

    死節:枯れた枝が包み込まれた状態にあるもので、周囲の組織とのつながりはない。枯れた枝が幹の在中に閉じこめられたものである。(TK)

    Q.板や柱にはなぜ節が現れるのですか?

    A.節とは、丸太から板や柱を切り出したときに現れる枝の断面です。

    木材はもともと樹木として生きていました。樹木は生きていくために光合成を行いますが、これを効果的に行うためにあらゆる方向に枝を伸ばし、葉を茂らせて、十分な日照を確保しようとします。つまり、節の存在は木材にとってごく自然な特徴といえます。

    日本では節のない木材が好まれる傾向にあり、しばしば「無節信仰」といわれたりもします。節の数や大きさは材木の美観の判定項目にもなり、一般に節の少ないものの方が高額で取り引きされます。

    ただ、最近では、比較的小さな節のたくさん現れたパイン材を用いた家具をよく見かけるようになりました。また、「木に節があるのは当たり前」と割り切って、地元産のスギやカラマツを安く仕入れて、内装材に使用した住宅も雑誌等で紹介されています。安物という固定観念が変化し、節の持つ自然さを積極的に活かそうという動きが活発化してきているのかもしれません。(MN)

    Q.木材は方向によって強さが違いますが、どの程度違うのですか? また、それはなぜですか?

    A.木材はかつて生き物,、すなわち樹木だったので、細胞壁でできています。自らの樹体の鉛直方向の重さに耐えるとともに、風や雪による曲げの応力に対しても耐えねばなりません。このような応力はもっぱら軸方向の圧縮や引っ張り応力です。木材はそれに耐えるために、軸方向に強く、しかも軽いという特長をもっています。

    セルロースの結晶の強さをうまく活かして、かつ、ミクロな欠陥があっても影響が少ないように、その結晶の糸を束ね、その束ねたものをさらに束ねて、明石海峡大橋のメインケーブルを超ミクロにしたセルロースのワイヤーを編んで作られたのが樹木の細胞壁です。このようにしてできた壁をもち、かつ中空の、細長い細胞が整列して樹木はできあがっています。

    したがって、木材の軸方向の強度は、同じ重量の鋼鉄よりも強いのです。その代わり、それに直角方向にはあまり強くなくてよいので、軸方向の強さに対して1/10とか1/20程度の強さしかありません。空手で木材の板を割るのを見かけますが、もちろん弱い方向に割っています。乾燥割れで既に目に見えないようなひびが入っている板ならさらに弱いでしょう。(MM)

    Q.アラスカヒノキは日本のヒノキと同じ物ですか?

    A.アラスカヒノキと称される木材は、ヒノキではなくて「ホワイトスプルース Picea glauca」という樹種だと思われます。

    マツ科の木でエゾマツやトウヒと同じ仲間です。日本でも建築用材や家具や楽器作りの材料によく使われています。木目や色がヒノキに似ているので、輸入商社や木材業者が「アラスカヒノキ」と言う名前にしたのだと思います。

    外国から木材を輸入する場合、日本で馴染みの無い木だと売れないので、みんなに分かりやすい名前をつけることがよくあります。

    例えば「ベイスギ」は、別名「ウェスタンレッドシーダー」とも言われ木目や色が天然の秋田スギにそっくりです。でもこれは、スギではなくて、ヒノキ科のネズコの仲間「Thuja plicata」です。

    木造住宅に頻繁に使われている「ベイマツ」はアメリカではダグラスファー(Duglas fir)と呼ばれていますがモミ(fir)でもなければマツでもなくてトガサワラの仲間(Pseudotsuga menziesii)です。しかし、木目や色は日本のマツにそっくりです。(MM)

    Q.例えば、ヒノキとスギは、見た目ではよく似ているが、圧縮、引っ張り強度で区別されていますね。同じような樹種でも強度が異なるのはなぜ?

    A.木材の強度は、主に比重(密度)、組織構造によって決まります。ヒノキはスギに比べ仮道管が長く(ヒノキ3.5mm,スギ3.0mm)、比重も大きい(ヒノキ0.44,スギ0.38)ので強いのです。(KA)

    Q.木と草とはどこで区別しているのでしょうか?

    A.木と草の大きな違いは、幹(茎)を太らせるか太らせないかで区別しています。

    専門的に述べますと、種子植物、シダ植物の器官内部を貫く条束状の組織系を維管束といいますが、この部分が太らず木部が発達しないものを草本植物(草)といい、その反対のものを木本植物(樹木)といいます。

    木本植物は多年性で、伸長成長が長年にわたり、樹皮の内側に形成層をもっていて肥大成長を行い幹を太らせることが出来ます。正確には維管束形成層といい、樹皮と木部の間にあって内側に木部の細胞を、外側には師部(内樹皮)の細胞を作り出します。形成層で作り出された細胞の寿命は一年足らずで、不要になった細胞は、細胞壁と細胞壁の間をリグニンという繊維を接着する働きのある成分で満たされて木化し強固な繊維になります。

    植物分類学的にいえば裸子植物(針葉樹類がほとんどを占める)はすべて木本性であり、被子植物のうち双子葉類には木本性のものと草本性のものがあり多様化しています。単子葉類(タケ,ヤシ等)では形成層ができないか、あるいはできてもその活動が貧弱なことが多くほとんど草本性です。(JY,RK)

    Q.広葉樹と針葉樹の違いや特徴は何ですか?

    A.広葉樹は被子植物双子葉類に属する樹木を総称し、針葉樹は裸子植物の針葉樹類に属する樹木を総称していいます。

    植物の構造の面から比べると、針葉樹は仮導管(水分と養分通導部)が木の90%を占めており構造が単純であるのに対して、広葉樹はさらに内部構造が発達しており、水分通導専用の道管をもち、様々な細胞に分化して組織も複雑になっています。

    生産される木材利用の面から比べると、針葉樹材は広葉樹より柔らかく軽いものが多く、また通直で割裂性がよい、木肌は繊細で柔らかな光沢を持ち白木のままで美しく、木理が通っています。

    広葉樹材は針葉樹材に比べると、一般に幹はまっすぐでないものもあり、枝との区別がつかない、一般に硬く重くなっています(キリのように軽いものもある)。

    一般に木材はその材質が硬く重いほど強度は強いが狂いは大きく、また逆に材が柔らかく軽いほど強度は弱くなるが狂いは少ないので、針葉樹が用材として多用されるのはこれらの性質のためです。(JY,RK)

    Q.木表,木裏て何ですか?

    A.例えば今、杉の丸太があるとしましょう。それから厚み10mmの板目の板(中心の髄を含まず)を製材した場合、板の樹皮側の面を木表(木に日光の当る側.表側)、板の髄側の面を木裏といいます。

    乾燥された板であっても長い間使用していると、木表側を凹に木裏側が凸に反りがちです。

    従って、和室の天井板(昔は杉の無垢材が使われていた)において、室内側に木裏を使うと、住んでいる人を圧迫するように室内側に凸に反ってきます。それがきらわれて、必ず室内側に木表がくるよう、施工されるようになりました。

    その為、突板製品であれ、プリント製品であれ、天井板は木表の柄になっています。(TT)