Q. 木材を使うことはなぜエコロジー(環境に優しい)なのですか?
A.
- 木材は樹木を植林することで資源としていくらでも再生が可能です.
- 樹木は成長過程で炭酸ガスを同化して大気中の炭酸ガスの減少に貢献します.
- 木材を使用することは炭酸ガスを大気中に出さずに木材中に固定したまま有効に利用することになります.
- 樹木を住宅部材などの木質材料に加工する際の必要エネルギーは他の資材と比較して最も少ないと言えます.(KY)
Q. なぜ熱帯雨林は減少しているのですか?
A.
- ラワン材など有用な樹種の伐採利用も原因の一つですが,貧しい現地農民の焼畑農業も原因です.しかし,最大の原因は牧場の開発,プランテーションの開発のための大規模な森林の焼き払いといえます.
- 最近では日本が主に買い付けているマレーシア,インドネシアでは森林をリサイクル利用するようにしています.つまり,植林が困難なラワン材などの有用樹種を緑林で再生するのではなく,森林を15から25に区分けをし,1年毎に一区分の森林の中の直径が60cm以上の樹木だけを伐採し,順次林区を移動して15年から25年で一回転し,再び前の林区の直径60cm以上の樹木を伐採するシステムをとっています.このシステムは欧米で行われている森林を皆伐した後に苗木を植林システムと比較してもかえって環境に優しい林業システムといえるかもしれません.マレーシアやインドネシアの農村部は例えば見渡す限り牧場になってしまっているニュージーランドなどと比較してもはるかに森林が多いと言えます.(KY)
Q. 君たちは,材木を商っているようだが,木を伐採して,環境を破壊していることが恥ずかしくないのか? 世間ではこれだけ地球環境(地球温暖化)やその原因となる炭酸ガスなどのことが話題になっているんだぞ! 先日の日経新聞にもそんなことが書かれていたが,木造住宅なんてやめてしまって,住宅はすべて鉄で作るべきだ! 君たちも研究対象を考え直した方がいいんじゃないか...まったく!
A. 厳しいご意見ですネ.
でも,少し考えていただきたいことがあります.木を伐採して材料として利用することが,これすなわち地球環境を破壊することなのでしょうか? あなたは炭酸ガス問題に着目されていますが,金属を使っていれば炭酸ガスの排出は抑制できるのでしょうか.
例えば,住宅建築や家具生産に利用される合板(薄い木材単板を接着剤で張り合わせたもの)と窓枠(サッシ)に利用されるアルミニウムを比べると,これらの材料を1m3調製するために放出する炭素の量は,合板が28kgであるのに対し,アルミニウムでは22,000kgであると報告されています.
住宅建築全体で比較すると,在来軸組の木造住宅を建築する場合,床面積1m2あたり約80kgの炭素を放出するのに対し,鉄骨鉄筋コンクリート造では,その2倍以上の炭素を放出します.
木造住宅においては,アルミサッシやその他多くのプラスチック製品を使う場合の計算であるため,これらを木材製品に置き換えることができれば,もっと炭素放出量を減少することができるはずです.さらに,これに伴って,廃棄物も減少することが可能となるでしょう.
ちなみに,木製サッシ(2.8kg/m2)製造時の炭素放出量は,アルミサッシ(97kg/m2)のそれの約35分の1であり,それだけ地球環境に与える負荷が少ないのです.
また,私たち人間も同じですが,若い頃,特に10代後半の成長期には,よく食べてよく育ちますよネ.樹木も,若い頃は成長が早く,よく食べる,と言うか,炭酸ガスをよく吸収します.ところが,人間も年をとるとあまり食べなくなるように,老木になると,炭酸ガスの吸収量も極端に減ってしまうのです.樹木も生命活動を維持するために,私たちと同じように,呼吸(酸素を吸って炭酸ガスを吐く)をしていますので,老木になると,固定する炭素と放出する炭素の量の収支がゼロになってしまいます.
従って,樹木はある程度成長すると伐採し,材料として木材を使い,その替わりに若い苗木を植える方が,結果として炭素の吸収量が多くなると言う考え方もあります.だからといって,天然林から大径の木材をいくらでも伐採しても良いと言うことではありません.
炭酸ガスを固定し,木材を提供するだけが森林の機能ではなく,森林には,水資源,土資源,生物多様性などの保全,防災,水質,汚染物質の浄化などの様々な機能があります.自然の恵みである木材を利用する場合,これらのことを忘れてはいけないのです.
さらに,アルミや鉄などの材料は,製造時に大量の炭素を放出するだけでなく,できあがった製品の中に炭素をまったく含んでいません.それに対し,木材は,製造時の炭素放出量が少ないばかりでなく,木材として存在する間は,すなわち,燃えたり,腐ったりするまでの間は,固体として固定された炭素を保管し続けてくれます.いわば,木造住宅や木材製品は炭素の保管庫としての役割を担っているのです.
したがって,「成長した樹木は伐って木材として使い,すなわち木材として炭素を保管する.そして伐った後に必ず新しい苗木を植える」ことが,大気中の炭酸ガスを減少させることになるのです.
私たちは,21世紀を支える貴重な資源としての木材をいかにうまく利用していくかについて研究しています.今後ともご支援をお願いいたします.
さらに詳しい内容については,
有馬孝禮著:エコマテリアルとしての木材,全日本建築士会(1994)
などを参考にして下さい.(MI)
Q. 木質フロアーがダニが発生しにくいのはなぜ?
A. 「カーペットがダニの温床!」とのテレビ報道で一挙に木質フロアーへの流れが加速されたのはご承知の通り.
ある実験では,カーペットでは104匹/m2のダニが生息しており,これを木質フロアーに変更すると23匹に減ったそうです.その理由を改めて整理してみました.
- カーペットは毛足の中に,人間の垢やフケ,毛髪などダニの餌になるゴミがたまりやすく,電気掃除機でもなかなか吸い取れない.それに対し,木材はほこりを吸いにくい.また,同じ量のほこりが木質フロアーの上にあったら,汚くて目立って仕方がない.さっさと掃除するから清潔という見方も.即ち,木質フロアーでは,ダニにとって物理的に繁殖に適さない住み難い環境を作っているという事になる.
- スギ,ヒノキ,マツなどではダニの増殖自体を抑制する効果がある.これら木材からでる蒸散成分(ヒノキ精油などが有名)の中には,ダニの増殖抑制成分もしくは殺ダニ効果を有する化学物質が存在するようである.(KA)
Q. 家具などから放散するのホルムアルデヒドについて,何か基準はありますか.
A. 食器棚及び育児用たんすについては,SGマークというマークがつけられている製品があります.
SGマークは,Safety Goods(安全な製品)の略号で,製品安全協会が定めたものです.「構造・材質・使い方などからみて,生命または身体に対して危害をあたえるおそれのある製品について,安全な製品として必要なことなどを決めた認定基準を,製品安全協会が定め,この基準に適合していると認められた製品にのみつけられるマークです.」(製品安全協会パンフレットより)
食器棚及び育児用たんすについてのSGマーク認定基準には,使用材料として育児用タンスの「Ⅰ型」にあっては,合板ではJASのF1,パーティクルボード,繊維板等ではJISのE0に,また育児用タンスの「Ⅱ型」及び食器棚にあっては,合板ではJASの(F1若しくは)F2,パーティクルボード,繊維板等ではJISのE2に適合するものであることとしている他,表面に接着剤を使用して加工を行った場合も各々同等の放散量基準をみたすこと,また塗料についてはホルムアルデヒドを含まないものであることなどを規定しています.(HY)
Q. 住宅内のホルムアルデヒド気中濃度について,何か規制はありますか.
A. 住宅室内空気中のホルムアルデヒド濃度等について,法的な基準は日本にありませんが(平成10年6月現在),近年社会問題となっている現状に鑑み,厚生省で組織された「快適で健康的な住宅に関する検討会議」が,平成9年6月にホルムアルデヒドの室内濃度指針値を提案しています.
この指針値(「30分平均値で0.1mg/m3以下」→室温23℃の下で約0.08ppmに相当)は,住宅室内のホルムアルデヒド濃度についての規制を定めたものではありませんが,居住者の健康被害を減少させるための目標と言えます(居住者がアレルギーや化学物質過敏症などの場合を除きます).
また,平成8年7月,産官学の共同により発足した「健康住宅研究会」では,発足から平成10年3月までの間,健康に影響を与える可能性のある揮発性有機化合物(当面優先的に配慮されるべき物質としてホルムアルデヒド,トルエン,キシレン,木材保存剤,可塑剤,防蟻剤を選定)に関して調査・検討を重ね,室内空気汚染の低減のための「設計・施工ガイドライン」及び「ユーザーマニュアル」を策定し,室内空気環境の良い住宅をつくっていくための設計・施工者としての考え方や住まい方の提案を行っています.(HY)
Q. 木質建材のホルムアルデヒド放散量の基準について教えて下さい.
A. ホルムアルデヒド放散量の基準は,JAS(日本農林規格)では普通合板,コンクリート型枠用合板,構造用合板,特殊合板及びフローリングの規格に,JIS(日本工業規格)ではパーティクルボード及び繊維板(MDFのみ)の規格に規定があります.
基準の数値は,一定枚数の試験片をデシケータという密閉容器に入れて20℃で24時間放置した時,一緒に入れた水に吸収されたホルムアルデヒドの水中濃度です.
このデシケータ値は一般に問題となる気中濃度(単位ppm等)とは別のもので,デシケータ値から気中濃度を推定するには,その建材の使用量,部屋の容積,温湿度,換気量等が大きく影響し,また建材からの放散量は十分な換気が行われれば時間経過とともにある程度のレベルまでは急速に低減するといったこともあるため簡単ではありませんが,影響する因子を考慮した推定式などが提案されています.
最近,ホルムアルデヒド等の化学物質による室内空気汚染が大きな社会問題となっていますが,合板などの木質建材でも価格を抑えられた中でホルムアルデヒド放散量の低減に各メーカー努力されており,全般的には放散量レベルの低い製品がかなり普及してきていると言えます.
なお,JASのF1~F3の基準は,低ホルムアルデヒドである旨の表示をする場合のみ適用する任意基準であり,Fの表示がないからホルムアルデヒド放散量がF3の基準を必ず超えているとか,F3が最悪レベルであるとかいうことではありません.
一方,対象となる製品は違いますが,JIS表示品はE0~E2の何れかに分類されます.(HY)
デシケータ法による水中濃度の基準 | JAS(任意) | JIS(択一) | 備 考 |
0.5mg /?以下 | F1 | E0 | JASは左の数値が何枚かの平均値の基準で,他に各枚の最大値の基準があります. JASとJISでは厚さにより試験片の数に若干差がありますが他は同じ方法です. |
1.5mg /?以下 | - | E1 | |
5.0mg /?以下 | F2 | E2 | |
10.0mg /?以下 | F3 | - |
Q. 木材はリサイクルが容易な材料と聞いていますが,ほんとうですか?
A. はい,そのとおりです.木材は,元来リサイクル性に優れた材料です.例えば製材廃材をチップ化して木質ボードや紙パルプの原料とするほか,廃棄の際には,エネルギーとして利用することも可能であり,多段階(カスケード)型の多様なリサイクルができます.
この点を木材工業についてみると,木質材料は原料の形態が素材→製材→板→削片(パーティクル)→繊維(ファイバー)と基本的にカスケード型をなしています.このため,木材工業の廃材の90%以上は,カスケードの流れにそってリサイクルされるほか,ときには燃料として再利用されています.
残念ながら,住宅解体現場で発生する解体材は,発生量が極めて多いのですが,ほとんどが有効に利用されることなく,産業廃棄物として焼却埋め立て処分されているのが現状です.しかし,最近,パーティクルボード(削片板)やファイバーボード(繊維板),そのほか木片セメントボードなどのいわゆる木質ボード,紙パルプ,その他の原料として,解体材を利用する技術が急速に進んできました.解体材の有効利用は,生活環境の維持という点からも,大変重要な課題です.(SK)
Q. 集成材のホルムアルデヒド放散量についての基準はありますか?
A. 集成材のJAS(日本農林規格)及び構造用集成材のJASには,現状ではホルムアルデヒド放散量の基準は設けられていません.
しかし,集成材からのホルムアルデヒド放散がどの程度のレベルであるかということは,ユーザーにとって大きな関心事であると思います.
ただ,集成材では合板に比べて断面が大きくなるので,普通合板などのJASによる試験方法を準用した場合に,デシケータという限られた大きさのガラス容器に入れる試験片の形状寸法や,接着層の断面が露出する木口面の取り扱い,合板などの面材に対して実際の使い方や使う量の違いを気中濃度への影響としてどのように評価するか.などが課題としてあると考えられます.
このような状況の中で,これまで様々な方法により集成材のホルムアルデヒド放散量についての試験が行われてきたのが実情ですが,業界団体の日本集成材工業協同組合と,集成材のJAS格付機関である財団法人日本合板検査会では,評価の統一を図るために一定の方法を定め,依頼検査における標準的な方法を定めています.
集成材のホルムアルデヒド放散量についての依頼検査は,財団法人日本合板検査会の各検査所へご連絡下さい(近畿四国地域は同検査会大阪検査所が管轄しています.連絡先:06-6685-0255).(HY)
Q. 花粉症について,その原因が針葉樹と広葉樹といろいろ耳にしますが,その影響はどのようにちがうのですか?
A. 植物の花粉が原因となって起こるアレルギー性疾患を花粉症といいます.
花粉症の原因花粉としては木本植物ではスギ,ヒノキ,マツ(針葉樹),ニレ,カバ,クワ,ヤシャブシ,ニセアカシア(広葉樹)等,イネ科草本植物ではカモガヤ等,雑草ではブタクサ,ヨモギ等が知られており,いずれも日本中で多く生育している植物です.
日本の人工林には針葉樹が多いのですが,これらのほとんどは風を利用して受粉する風媒花植物です.この花粉は,風に乗せて空中を移動させるために,軽い花粉を作って一斉に開花し,一気に大量放出することで受粉率を高めています.
その中でもスギは本州最北から九州に至るまでのほぼ全域で人工林の主要樹種として植林されています.それゆえ大気中に拡散される花粉の濃度が他のものに比べて高いため花粉アレルギーを引き起しやすく,日本でのスギ花粉症が多発している要因にもなっています.(JY,RK)
Q. 照葉樹林とは何ですか?
A. 冬でも落葉しない広葉樹で,葉の表面のクチクラ層(角質の層)が発達した光沢の強い深緑色の葉を持つためこう呼ばれており,日本ではシイ・カシ類がこれにあたります.
西南日本,台湾,ヒマラヤ,東南アジアの山地とアジア大陸東岸など,主に降雨量の多い亜熱帯から温帯に分布している常緑広葉樹林です.この林は,コナラ属アカガシ亜属,シイ属,マテバシイ属をなどのブナ科を優占種としながら,クスノキ科,ハイノキ属,ヤブコウジ属など多くの樹木があり,樹高は20~30mぐらいになります.(JY,RK)
Q. ある時期,「割り箸は使い捨てなので使わない」ということがありましたが,割箸は本当にエコロジーに反するのですか?
A. 割箸を使わないから環境保護だとは限らないと思われます.
「割箸問題」で取り沙汰されていたのは,使い捨て製品の大量使用が資源の無駄遣いになるという点です.このことは割箸だけに限らず,あらゆる製品,そしてその原料にいえることでもあります.
割箸は原料が木そのものなので,それを使うことがすなわち木質資源の浪費であり,引いては木材の過剰伐採になると話題になりました.
実際のところ,製品輸入は40%を超えており,国内製のものでも外材利用が多く,国産材を使った割箸の自給率は3割ほどです.国内産材としては,製材に使えないパルプ用原木を転用しているものもあります.
輸入製品では南洋材(熱帯林)を使って割箸を使っているものは多くあります.南洋材伐採量全体の約0.03%ほどといわれており,これが多いのか少ないのかは一概には判断できません.また南洋材でも廃材を有効利用している事例が多くあります.
割箸の原料となる木材は,もともとが製材品としての利用価値の少ない間伐材・端材利用から始まった商品で,廃材の有効利用ともいえるかも知れません.また廃棄における環境への影響は,石油製品のよりは少ないと思われます.その点を比べると,木材以外の他の原料の製品ではどうでしょうか? 使用量を減らすことはエコロジーになるのであって,割箸を廃止することそのものに大きな意味があるのではありません.地球環境のために使い捨てスタイルを考え直すことが必要なのです.(JY,RK)
Q. 広葉樹の人工林は出来ないのですか?
A. 人工林は用材の生産を目的としたものがその造林面積の大部分を占め,そのほかには砂防林・防風林等特別の用途を目的として造林されるものがあります.
日本の主な造林樹種はスギ,ヒノキ,アカマツ,クロマツ,カラマツ,トドマツ,エゾマツ等の針葉樹が多くあります.針葉樹の人工林が多いのは,針葉樹は広葉樹に比べ幹が通直で枝が少なく,林分あたりの幹材積の収量が多いからです.広葉樹としてはケヤキ,クスノキの人工林はありますが,日本での広葉樹人工林はきわめて少ないのが現状です.
近年では木材の加工技術が発達したので広葉樹も合板など加工材として多用されるようになりました.
しかし,加工技術が発達する以前の広葉樹の用途は薪炭材及び工芸品への用途が主であったため,需要が少ないこと,広葉樹は萌芽能力(切り株から芽が出ること)が高く二次林が構成されるのでわざわざ手間をかけて植林を行う必要がなかったこと,等の理由のため,育林技術が発達せず,施業方法が確立していません.このため,需要が増している今日でも,広葉樹の人工造林が行われるのはきわめて少ない例です.(JY,RK)
Q. 木と草とはどこで区別しているのでしょうか?
A. 木と草の大きな違いは,幹(茎)を太らせるか太らせないかで区別しています.
専門的に述べますと,種子植物,シダ植物の器官内部を貫く条束状の組織系を維管束といいますが,この部分が太らず木部が発達しないものを草本植物(草)といい,その反対のものを木本植物(樹木)といいます.
木本植物は多年性で,伸長成長が長年にわたり,樹皮の内側に形成層をもっていて肥大成長を行い幹を太らせることが出来ます.正確には維管束形成層といい,樹皮と木部の間にあって内側に木部の細胞を,外側には師部(内樹皮)の細胞を作り出します.形成層で作り出された細胞の寿命は一年足らずで,不要になった細胞は,細胞壁と細胞壁の間をリグニンという繊維を接着する働きのある成分で満たされて木化し強固な繊維になります.
植物分類学的にいえば裸子植物(針葉樹類がほとんどを占める)はすべて木本性であり,被子植物のうち双子葉類には木本性のものと草本性のものがあり多様化しています.単子葉類(タケ,ヤシ等)では形成層ができないか,あるいはできてもその活動が貧弱なことが多くほとんど草本性です.(JY,RK)
Q. 桜の木が道路にかかっているのだが,この木が道路の建築限界を侵している.それを防ぐため,木の移植をしようとしたが,訳あってそれはできない.そこで道路に被さっている枝を切り落とそうとしたのだが,あんまり切りすぎたら木が死んでしまう.そこでどれくらいまでなら木を切っても大丈夫なのですか?
A. 桜切るバカ梅切らぬバカと言うことわざがあるとおり桜は普通は剪定しません.桜を剪定しない理由は桜を切ると切り口から水が入って腐り出すからです.
桜の小さい枝を切る程度ですと問題ありませんが,ある程度の太さの枝を切る場合は切り口に塗る薬がありますからそれを塗って下さい(ホームセンターで手に入るそうです).これでまあ問題はないとは思います.
何パーセント切れるかという質問に対してはどれぐらいとは言い難いです. 桜自体は成長力のある木ですが,切り口から腐ると言う問題があるので,あまり幹に近いところは切ることは好ましくありません.
ちなみに私が子供の頃,庭の真ん中にあった大きな桜の木が腐り出して,父親が幹の下から3mぐらのところから上を切ってしまって,その切ったところにすり鉢のデカイのをかぶせていたのを思い出しました.切り口からの水の進入をとめようとしたのだと思いますが,おかげでその桜は腐りも止まりましたが,頭にすり鉢をかぶり,幹の途中から両方へ出ている枝が人間の手のように見えて,何かこっけいな姿に見えたことを思い出しました. (KN)
Q. 樹木の検索に,アカシアが無いのはなぜですか? 他のホームページの検索でも,アカシアが見つからないのです.
A. 英語ではacacia,マメ科アカシア属の樹木の総称で,世間一般ではニセアカシア(ハリエンジュ)のことをアカシアと呼んでいます.アカシア自体は米国産で,日本には自生していません.
園芸関係者の間ではミモザと呼ばれるハナアカシア,ギンヨウアカシアをアカシアと呼んでいますが,これは誤りです. (KN)
Q. 木の種類の中で毒性があるものや,かぶれをおこす種類のものがあるかと思いますが具体的にどんなものがあるのでしょうか?
A. 木も生き物ですから,自分に対して有害なものから守ろうとします.どんな木でもやっているのが,心材を作るという行為です.
丸太を切り口から見ますと,木は周辺部の2-3cmのみが白くなっていますがこれが辺材と呼ばれている木の若い部分で,水や栄養分を通しているところです.この部分のみが木で生きているところなのです.この部分は木も柔らかく栄養もあるので白蟻を始め黴や菌がもっとも好む部分です.
木としては食われてばかりでは倒れてしまいますので,表面部分以外は木の細胞の中に虫や菌に食われなくするためにフェノール類の物質を沈着させ赤味を帯びます(心材化).しかし死んでも木を支えることはできますので,心材は木を支えるだけのために存在していることになります.しかしさすがに死んでしまった心材でもそれが何百年も経つと腐ってしまって,木の真ん中が空洞になったりすることがあります.よく大きな木で真ん中が完全に腐ってからっぽなのに生き生きとしている木がありますが,樹体を支えるには周辺部が有効なので全く大丈夫なのです.肥大成長には樹皮のすぐ内側の形成層細胞が主役を担っています.
ところで,どんな木でも生き残るために毒が有効なら持ちたいのはやまやまですが,すべてうまく持てるとは限りません.しかし進化の過程でいくつかの木は持つことができました.ヒノキ(桧)のあの独特の匂いは黴をよせつけませんし,クスノキ(楠)の強烈な匂いは防虫剤として使われています.チークは木の中の独特のオイル成分が腐ることを防止しています.これらは広い意味では毒です.
木はその進化の過程で微生物と徹底的に戦ってきました.それ故,ほとんどの木の心材は微生物には敵対的です.しかし動物に関しては,木の実を食べて,種を運んでくれたり木にとっては持ちつ持たれつの関係でほとんどの場合は友好的な関係を結んできました.しかし中には動物に対して敵対的な行為をするものもあります.例えばうるしの木は‘かぶれ’ますし,桧系統の木は製材の時のオガ屑は喘息を起こしたり,人によってはかぶれたりします.アフリカ材のマコレという木は木の中にシリカを溜め込んで製材の刃物はボロボロにするは,オガ屑は猛烈なアレルギー反応を生じさせるはで,徹底的に自分が加工されることに抵抗します(しかし加工されてしまえば高級な家具に使用されたり,あきらめの早い木?です).
・・・ということで,我々が日常使っている木には広い意味での毒があります.しかし木材に使用されている防腐剤など人工的な毒と比べて木の毒というのは大きな違いがあります.基本的に木は自分を守れば良い訳ですから,防虫性は持っていますが,殺虫性は持っていないということです.例えば楠から作った樟脳をいつも洋服ダンスに入れていたから,体内に毒が蓄積されたり,漆職人は漆の毒が体内に蓄積されるということはありません.実際,製材所で朝から晩までオガ屑を吸っていた人が何年働いていても体を悪くはしませんが,石やセメントを扱っている人は長い間の労働で肺が機能しなくなったり防腐剤や殺虫剤を扱っている人が,段々その毒が体内に蓄積されそれが人体の器官を犯したり,ホルモンバランスを崩したりします. (KN)
Q. タイ国境に近いカンボジアに成育している現地で「ローズウッド」と呼ばれている樹があります.現地では箸にしている人もいるのですが,これはカリンなのでしょうか?また,この学名をご存知でしたら教えていただければ幸いです.
A. カリンではありません.別の樹種です.ローズウッドは学名Dalbergia latifoliaで,カリンよりも高級材です.カリン類でニューギニアローズウッドというのがありますので,そのため混同されやすいのでしょう. (KN)
Q. 楡(ニレ)科の槻の木という木材を手に入れました.楡科と書いてありましたが,他のホームページで日本の三大ケヤキと言われる「原町の大ケヤキ」は地元で槻の木と呼ばれているようです.槻の木とはどのようなものですか? 高槻とは関係があるのでしょうか?
A. 「槻」はケヤキの古語です.広辞苑にも掲載されています.「高槻」も「原町のケヤキ」もそこから由来していると思います.原町のケヤキについては『巨樹・名木巡り関東』,『日本の巨木』,『巨樹・巨木 日本全国674』,『巨樹探訪の旅』,『巨樹の民俗学』,『異相巨木伝承』,『ぐんまの巨樹巨木ガイド』,等の書籍に掲載されていますが,牧野さんの書かれた『巨樹の民俗学』や『異相巨木伝承』に詳しく載っています. (KN)
Q. 巨樹と巨木は同じものですか,違いがあるのならどのようなことが違うのでしょうか?
A. 厳密な区別はありませんが,最近になって利用している方々に少しづつコンセンサスが出来てきました.巨樹は幹廻り10メートル以上のもので日本ではすべて何らかの記念物の対象となっている.巨木は幹廻り3メートル以上のもの,昭和63年の環境庁の調査によると,全国に55798本と記録されています. (KN)
Q. 木は「持続可能な資源」と聞きますがなぜですか?
A. 石油、石炭、鉄鉱石などの埋蔵資源は、掘り出して使ってしまえば、いつかは底をつきます.ところが,木質資源(木材,竹材)は,伐採して使っても,その後に新しい苗木を植えておけば,30~50年で,また材料やエネルギー源として使えるように成長してくれます.使う木材の量が成長する樹木の量を越えない限り,木材は,永久に持続可能な資源として利用できるのです.さらに,樹木の生長期間が短縮されるか,木材製品の高耐久化技術,リサイクル技術によって製品の使用期間が長期化することにより,木材の消却量が森林の生長量を下回るように工夫すれば,大気中の二酸化炭素量を減少させることができます.木材利用によって,積極的に地球温暖化を防止することができるのです.他の建築材料は,使用すれば必ず大気中の二酸化炭素を増加させるのに対し,木質系材料は,使用しながら大気中の二酸化炭素を減らす可能性を持つ唯一の資源なのです. (MI)
参考文献
大熊幹章:炭素ストック, CO2収支の観点から見た木材利用の評価, 木材工業, 46 (3), 54-59 (1998)
Q. 樹木はどのぐらいの炭酸ガスを固定するのですか?
A. 樹木は,二酸化炭素が約1.5kg,水が約300kg,日射エネルギーが約3760calあれば,光合成によって,約1kgの炭素化合物(ぶどう糖)を生産することができます.その際,副産物として約1kgの酸素が空気中に放出され,水のほとんどは水蒸気として空気中に放出されます.ただし,生産された炭素化合物の約半分は,樹木が生命活動を維持するための呼吸によって消費(二酸化炭素として放出)されますので,上記によって固定された二酸化炭素量は約0.75kgと計算され,これが幹,枝,根などになります.すなわち,樹木が生産し,私たちが材料として利用している木材とは,大気中の二酸化炭素が,太陽エネルギーの力で,セルロースやリグニンという形に変化したものなのです.いわば,「樹木とは二酸化炭素固定装置」であり,「木材とは炭素のかたまり」なのです.
我が国は,森林面積は約2,500万ヘクタール(国土の約3分の2)で,この森林が1年間に固定する炭素の量は約5,400万トンと概算されています.地球全体で考えると,約50億ヘクタールの森林が固定する炭素量は,1年間に約328億トンと推定され,これを二酸化炭素に換算すると約1203億トンとなります.森林の二酸化炭素の吸収能力(成長速度)は,森林生態系やそれを構成する樹種によっても異なり,熱帯多雨林で990,温帯常緑樹林で585,亜寒帯林で360トン/km2/年程度と試算されています. (MI)
参考文献
伊藤弘二:今後のプレカットの工場経営と性能規定について, ウッドミック, No.185, 38 (1998)
只木良也:「環境資源としての森林」(樽谷 修編), 朝倉書店, 95-100 (1995)
R. H. ホイタッカー (宝月欣二訳):「生態学概説 -生物群集と生態系- (第2版)」培風館 (1997)
Q. 炭酸ガス(二酸化炭素)が増えるとなぜ地球が温暖化するのですか?
A. 地球大気は,窒素,酸素,アルゴンガスなどの準定常成分と,水蒸気,二酸化炭素,メタン,フロン類などの微量な変動成分で構成されています.これらは,太陽からの日射エネルギーに対してほぼ透明なので,日射は大気層を透過し,地球表面を暖めたり,光合成作用に使われます.暖められた地球表面からは,その温度に応じて,赤外線エネルギーが外部へ放射(赤外放射)されます.この時,大気中の準定常成分は,赤外線に対してもほぼ透明です.しかし,熱力学的にアクティブな変動成分は,赤外線エネルギーを吸収,再放出するため,地球からの赤外放射の一部を遮断します.このような気体は,ちょうど温室のガラスのように働くので,温室効果ガス(赤外放射活性気体)と呼ばれています.大気中での温室効果ガスの濃度が上昇すると,大気の恒常的な温室効果を増大させるので,地球の気候変動(地球温暖化)を引き起こす原因となります. (MI)
参考文献
鈴木英夫:「地球環境を考える」(渡辺 正編), p. 61, 丸善 (1996)
内嶋善兵衛:「地球温暖化とその影響 -生態系・農業・人間社会-」, 常華房 (1997)
福岡克也:「地球環境保全戦略」, 有斐閣 (1995)
環境庁: EICネットホームページ(http://www.eic.or.jp )(1998)
ワーキング・グループ: 大気汚染の現状と温暖化, 化学工学, 54 (1), 8-12 (1990)
Q. 「エコマテリアル」って何ですか?
A. Environment Conscious Materials の略で,フロンティア性(人類の活動圏を広げ活動環境を拡張する),環境調和性(人類の活動圏と外部環境との調和を図る),アメニティー性(活動圏の中で生活環境に豊かさを与える)の3点から評価した「生態系に優しく環境保全に適した資材」を意味します.
木材は,製造から廃棄までの環境負荷が少なく,優れた吸放湿性や視覚特性,触感性によって,居住空間や人に豊かさを与えてくれます.しかし,使用環境によっては,強度が不足していたり,水分の吸脱着による寸法変化,変色,腐朽など,他材料に比べて劣る点が指摘されています.これらの欠点を物理,化学,生物処理によって補うことにより,木材を真の「エコマテリアル」に変換することができます. (MI)
参考文献
大越 誠:「解説・地球環境問題と木材」,日本木材総合情報センター, p. 36-37 (1999)
小池浩一郎:「現在林業」(1999)
Q. 「都市の森林」って何ですか?
A. アルミニウムや鉄などの材料は,製造時に大量の炭素を放出するだけでなく,できあがった製品の中に炭素をまったく含んでいません.それに対し,木材は,製造時の炭素放出量が少ないばかりでなく,木材として利用されている期間,すなわち,燃えたり,腐ったりするまでの間は,固定された炭素を保管し続けてます.木造住宅や木材製品は炭素貯蔵庫としての役割を担っているのです.さらに,炭素貯蔵量をマイナスの放出量と考えると,木造住宅建築は,大気中の二酸化炭素を減らす計算になります.
1993年の我が国の全住宅に使用されている木材が貯蔵する炭素量は約1億4000万tです.これは我が国の全森林に貯蔵されている炭素量(7億8000万t)の約18%にも及びます.その内訳は,木造住宅が1億2859万t,非木造住宅が1,234万tであり,炭素貯蔵庫としての木造住宅の価値が評価されます.木造住宅群はまさに「都市の森林」なのです. (MI)
参考文献
岡崎泰男, 大熊幹章: 炭素ストック, CO2放出の観点から見た木造住宅建設の評価, 木材工業, 53 (4), 161-165 (1998)
有馬孝禮:「エコマテリアルとしての木材」, 全日本建築士会 (1994)
有馬孝禮:木造住宅のライフサイクルと環境保全, 木材工業, 46 (12), 635-640 (1991)
有馬孝禮:資源・環境保全面から見た木造住宅の展開, 木材工業, 49 (11), 498-504 (1992)
Q. 「炭素税」って何ですか?
A. アルミサッシ製造時の炭素放出量が大きいのは,アルミニウムを調製するために多大なエネルギーを必要とするからです.エネルギーを得るためには,化石燃料を燃やさなければならず,それによって大量の炭酸ガスが放出されます.
スウェーデンなどの北欧諸国では,エネルギーを得るために放出される炭酸ガス量に応じて“炭素税”が徴収されています.この税金は,環境保全のための事業に支出されます.炭素税が一番高いのが石炭で,その次が石油,そして天然ガスと続きますが,ここで注目すべきは「木材の炭素税がゼロである」ことです.木材も燃料として燃やせば炭素を放出します.ところが,北欧などの環境先進国では,「木を伐った後には必ず木が植えられる.苗木は再び大気中の炭酸ガスを吸収して成長する.だから放出する量と吸収する量で,差し引きゼロになる」という考え方が定着しているからなのです. (MI)
Q. 地球が温暖化すると,どんなことがおこるんですか?
A. IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は,経済成長,人口増加,対策の有無,気候感度(二酸化炭素増加による気温の変化しやすさ)などの条件を想定し,2100年までに地球上の平均気温は1~3.5℃上昇すると予測しています.地球規模で気温が上昇すると,次のような影響が懸念されます.
- 海面の上昇(海水の体積膨張や氷河の融解)50cm上昇→沿岸地域の水没
日本では,海水位が1m上昇すると海面以下の地域が2.7倍(2,300km2)
→人口1540万人,資産109兆円が危険にさらされる - 生態系の変化(絶滅種が増加,林業活動の配置に影響,野生生物の生息場所が崩壊)
気候帯水平移動速度:4~5km/年 ⇔ 樹木の分布拡大速度:40m~2km/年
穀物類の栽培北限:数100km北上/平均気温が1℃上昇 - 健康(伝染病危険地域が増加)→西日本が伝染病流行危険地域に入る可能性がある
- 公害との複合化(大気,水質汚染などの公害の影響を助長)
- 影響の度合い(高緯度地域ほど温暖化)→北極や南極では10℃近く上昇(MI)
参考文献
環境庁:EICネットホームページ(http://www.eic.or.jp) (1998)
福岡克也:「地球環境保全戦略」, 有斐閣 (1995)
Q. 「古材バンクの会」って何ですか?
A. 貴重な木造建築の保存と再生を促進するとともに,保存がかなわず消失しようとする古い木造建築部材(古材)を資源として再利用していくための社会システムを作る目的で,1994年に設立された全国的なネットワークです.会員数は全国に300余名.情報誌『古材バンク通信』(隔月刊)を発行しています.
主な活動は,1.古材の提供者と利用者をつなぎ活用を促進する,2.伝統的木造建築文化と建築技能の継承と発展を図る,3.資源を大切にする社会の実現を目指すの三つです.「利用相談部会」と「調査部会」があり,前者では,古い民家を再生したいという住い手に,建築士・工務店などの専門家が相談に応じ,必要によって設計施工に関わる工務店を紹介しており,後者では,民家や木造建築の研究者,そして家や木材について学ぼうとする市民が集まり,提供の申し出があった木造建築の調査を行っています.また,『古材バンクストックヤード』に,良質古材を集積し,活用の機会を図っており,その他,木造建築とその住まいを通しての文化・町並みに親しんでいただくための見学会,講習会,シンポジウムなどの行事も開催しています. (MI)
参考文献
http://www.kyoto.zaq.ne.jp/araki/kbank.htm
http://hb6.seikyou.ne.jp/home/kyoto-net/kbank.htm
Q. 環境に優しいリサイクル商品として「パーティクルボード」の名前をよく聞きますが,その特長や用途を教えて下さい.
A. パーティクルボードは,木材を破砕・切削して小片にしたチップに合成接着剤を塗布し,熱圧成型した木質ボードです.歴史的には,製材工場や合板工場等の木製品製造工場から出る廃木材を有効利用する目的で各地に工場ができました.現在では,そうした廃材に加えて,産業廃棄物と言われる,家屋解体材や流通廃材(梱包材やパレット等)の廃材も利用する様になってきています.
接着剤の方は,昨今のシックハウス問題で,現在の国内メーカーは殆ど低ホルマリンまたはゼロホルマリン系の接着剤に変わっており,現時点での最高グレードE0(ゼロ)では,天然木材が発するホルムアルデヒトに近い数値のものとなっています.
用途的には,家具材料,建築材料に使用されており,最近のキッチン等の収納扉はパーティクルボードの表面に印刷紙(メラミン化粧紙など)を貼った物が多くなっています.建築材料では,戸建て住宅の床下地(床フローリングや絨毯の下地),集合住宅(マンション)の床下地(置床システム)等に多く使われています. (ボードメーカー勤務・TY)
Q. 資源循環問題に関する施策の進んでいるドイツなどでは,建築廃材はどのように処分されているのですか?
A. 木材の建築廃材という点では,日本に比べて圧倒的に発生量が少ないと認識してます.しかし,今年,私が訪ねたドイツの産廃工場では,木材も含めて建設廃材や一般の廃材も含めて,質の良い(異物の少ないもの)は分別されてリサイクル化されていましたが,ごちゃ混ぜの廃材はやはり燃料として逆にお金を払って出荷していました. (ボードメーカー勤務・TY)
Q. 建て替えのために壊された住宅は全て産業廃棄物となるのでしょうか?ショベルカーなどで一気に解体している様子を見ていると,とてもリサイクルしているようにはみえないのですが……?
A. 一般に,家屋解体といっても,その方法によってリサイクルの実態は異なります.一番リサイクルしやすい解体方法は,ゆっくり時間をかけて,大半を人手で行う完全分別解体ですが,これは経済的にも殆ど行われません.またその正反対の方法として,「ミンチ解体」と呼ばれる,大きな重機で分別など一切せずに壊してしまう方法ですが,これは出てくる廃材は全て混合物となり,御指摘の様に,リサイクルは不可能となり,現実的にこうした廃材はまともな廃棄物処理業者は,受入れを拒否,またはかなりの高額でしか引取しません.2001年5月に建設リサイクル法が施行されますが,こうしたミンチ解体は禁止されています.(残念ながら悪徳業者等は,これを行なっており,社会問題化していますが)
実態としては,重機を使いながら,やはり人手で解体と分別を行う方法が現時点での最も現実的な方法であり,現場にて粗方の分別,例えば木材と瓦,ガラス,金属類,畳などを分けて,夫々を専門の業者が引き取るという方式で,夫々のルートでリサイクル化するという方法が取られています.こうした方法を分別解体と呼ばれていますが,建設リサイクル法では,家屋の解体作業は分別解体しなければならないとされており,施主がその責任を負うことになっています.よって,一般の人が家を建て替える時には,法律的にはその施主である人がこうした分別解体と,出てくる廃材のリサイクル義務を負うこととなっています.施行を前に,業界ではかなりの混乱が予想されています. (ボードメーカー勤務・TY)
Q. 森林認証制度「FSC」とは,どのような制度ですか?
A. 森林認証制度とは,「適正な森林管理」が行われていることを,一定の基準に照らして,独立した第三者機関が審査・認証する制度です.FSC(Forest Stewardship Council 森林管理協議会)による森林認証制度はその一つで,世界で最も広く展開しています.FSCが定める基準は,環境,社会,経済の3つの側面から見て適正な森林管理であることを要求します.つまり,FSCの認証を取得した森林管理主体(個人の林業経営者や林業会社,森林組合などのグループなど)は,適正な森林管理を行っているという「お墨付き」を得ることになります.FSCの認証を受けた森林から出る木材やそれを加工した木材製品には,FSCのトレードマーク(ラベル)をつけることができます.それにより,環境への関心の高い消費者が,森林破壊によって生産された木材製品を避け,選択的に環境にやさしい木材製品を購入することができます.
森林認証制度には,FSCの他に欧州中心に展開するPEFC(Pan-European Forest Certification),アメリカで展開されている林産業界主導のSFI(Sustainable Forestry Initiative),カナダで展開されているCSA(Canadian Standards Association)などがあります. (シンクタンク勤務・DM)
Q. 認証木材(certified wood)って何ですか?
A. 環境等に配慮した適正な森林管理により生産された木材であると認証されている木材のことです.FSCの森林認証制度では,森林管理についての認証だけでなく,認証を受けた森林から出た木材またはそれを材料とする製品であることを審査・認証するCoC(Chain of Custody)認証というプロセスがあります. (シンクタンク勤務・DM)
Q. 「ISO14000シリーズ」って何ですか?
A. ISO14000シリーズは,ISO14001という環境マネジメントシステム(EMS: Environment Management System)に関する規格とそれに付随するガイドライン等の総称のことです.ISO 14001の認証を取得した企業は,環境負荷の少ない企業経営を実現するためのマネジメントシステムを確立しているということが保証されます.ISO14001はプロセス基準またはシステム基準と呼ばれていて,環境マネジメントの結果がどうかということよりも,その企業が定めた目標を達成するための経営システムが確立されているかどうかが審査対象となります.システムについての認証システムであるため,製造業だけでなく林業を含むありとあらゆる業種で認証取得が可能です.それに対してFSCの森林認証制度は,パフォーマンス基準と呼ばれ,経営システムよりも,定められた目標が達成されているかどうかという結果の方が主な審査対象となります.
ISO14001は,「組織の継続的な環境保全のための仕組み(環境マネジメントシステム)」に対する要求事項を規格化したもので,この要求事項は,大きく「環境保全のための仕組み」と「環境保全を継続的に効果的に進めるための経営の仕組み」に大別されています.
「環境保全のための仕組み」は,その組織の持つ重大な環境影響の特定,環境方針と目標・実現計画の設定,法規制の特定と遵守方法の設定,必要な場合には手順書による維持管理方法の確立,及びこれらの実施,監視が要求されています.また,「環境保全を継続的に効果的に進めるための経営の仕組み」は,環境保全組織とその責任・権限の明確化,必要な認識・訓練・能力づけのための教育制度の設定,文書体系の構築,文書・記録類の管理,問題発生時の是正処置実施,定期的な経営層による見直し,などが規定されています.森林管理の分野ではISOとFSCが良く比較されますが,ISOの方が文書整備を緻密に行う必要があると言われています. (シンクタンク勤務・DM)
※ISOは,International Standards Organization(国際標準化機構)の略.ISOは国別の規格管理機構の国際的な連合体で,工業製品などについて世界統一の規格を定めているが,14000シリーズ(環境マネジメントシステム)の他,9000シリーズ(品質管理システム)など,経営システムについての規格も定めている.
Q. 森林には,炭酸ガスの固定以外に,どのような働きがありますか?
A. 森林の働きは非常に多様です.一般には,炭酸ガス固定の他に,生物多様性保全機能,木材生産機能,水源かん養機能(渇水緩和,洪水防止,水質浄化),山地保全機能(土砂崩壊防止,土砂浸食防止),保健休養機能(レクリエーション,教育,文化)などがあると言われています.近年は,エネルギー源として再評価され,木質バイオマスエネルギーへの注目も高まっています. (シンクタンク勤務・DM)
Q. 世界の森林は本当に減少しているのですか?
A. 先進国では増加傾向にあり,発展途上国では減少傾向にあります.
FAOの資料によると,1980年から1995年にかけて,先進国では森林面積が2.7%増加している一方で,発展途上国では9.1%減少しています.発展途上国にある森林の方が面積が多いので,世界全体で見ると森林は減っているということになります.またWWF(世界自然保護基金)は,世界の原生林はこの100年の間で約半分になってしまったと報告しています.
森林を減少させず,また貴重な自然を保護しつつ木材生産を行っていく「持続可能な森林経営」が今求められています.そのような経営であることを認証するシステムとして,森林認証制度への関心が高まって来ています. (シンクタンク勤務・DM)
Q. 日本にはどのぐらいの森林資源があるのですか?また,このまま木を利用し続けても日本の森林はなくなりませんか?
A. 日本の森林面積は約2500万haで,国土の7割近くを占めています.森林面積は近年ほとんど変化がなく,今後も面積が大きく変化することはないと見られています.森林の蓄積(木が生長した量を体積で表したもの)は,人工林を中心におよそ8千万m3ずつ増えています.ですから,森林資源がなくなる心配はほとんどありません.それに対して年間消費している国産の木材は約2千万m3です.ですから,国内の木を全く切らないとしたら,森林の蓄積の年間増加量(年間に成長する木材の量)は1億m3あるということになります.
外材の方が価格が安いため,日本の木材の自給率は現在のところ約20%です.つまり,日本の木材の総需要量は年間1億m3で,そのうち年間8千万m3を外国から買っています.
国産材の利用量が今のままだとすると,蓄積が毎年8千万m3のペースで増加することになり,日本の森林がなくなるということは全くありません.もし,外国から木材を買うのをやめてすべて国産材でまかなうようにしたとすると,年間に成長する木材の量が1億m3で,木材の総需要量も1億m3ですから,ちょうどバランスして,森林の蓄積は増加も減少もしないということになります. (シンクタンク勤務・DM)
Q. 「二次林」って何ですか?
A. 原生林が破壊された後に生じた森林を二次林といいます. (MI)
Q. 「極相林」って何ですか?
A. 森林は,時間と共に生物体の総量(バイオマス)が増加し,種組成も変化していきます.これを遷移と言います.森林が破壊されることなく長い年月を経ると,遷移が行き着くところまで到達し,バイオマス,種組成等がある平衡状態に達します.そのような森林を極相林と言います. (MI)