木材の規格・法規– 木のはてな?(Q&A読み物) –

    Q. 日本農林規格(JAS)について教えてください.

    A. 日本農林規格(Japanese Agricultural Standards: JAS)とは,「農林物資の規格化および品質表示の適正化に関する法律(1950年法律第175号)に基づき,農林水産大臣が制定する規格」のことです.

    このうち集成材に関するものでは,「造作用集成材(非耐力部材)」,「化粧ばり造作用集成材(非耐力部材)」,「化粧ばり構造用集成材(耐力部材)」および「構造用集成材(耐力部材)」があります.(TK)

    Q. 集成材のJAS規格での分類と性能評価について知りたい.

    A. 集成材は,その強度的なばらつきが小さいことなどから,本来構造的な利用を主に諸外国で発展してきた木質材料ですが,日本では従来,表面に美しい化粧薄板を貼った化粧ばり集成材(鴨居,敷居,長押などの造作材や見えがかりの柱など)としての利用がむしろ中心だったと言えます.

    しかし近年,建築基準関係法規における大断面木材の耐火性能の再評価や,住宅施工後の木材の乾燥収縮に起因するクレーム対策等からその寸法安定性が改めて見直され,大壁工法の管柱や,梁・桁など,化粧ばりを施さない構造的な利用が大きく増加しています.

    このような状況にも対応する形で,JAS規格においても平成8年に大幅な規格再編が行われています.  鴨居,敷居などに代表される「化粧ばり造作用集成材」や見えがかりの柱として使用される「化粧ばり構造用集成柱」,及び主として階段板やカウンターなどに利用されることの多い「造作用集成材」など,前述のような日本独特の使い方をする集成材に対しては「集成材の日本農林規格」として従来の規格を若干整理して踏襲し,一方,純粋な構造用の集成材については,大壁用柱など小断面の構造用集成材を,旧構造用大断面集成材規格と統合し,新たに「構造用集成材の日本農林規格」として一本化しています.

    構造用集成材のJASには,同じ品質のひき板を積層した「同一等級構成集成材」と,外側の層ほど強いひき板を配置して積層した「異等級構成集成材」の区別があります.

    異等級構成集成材は,梁等の高い曲げ応力を受ける部材で,構成するひき板を最外層・(外層)・(中間層)・内層用に区別し,最も応力が大きくなる外側(梁の上下面)に使うひき板ほど品質基準を厳しくしています.

    異等級構成集成材の最外層~内層のひき板は,積層方向の中心から上下に向けて対称に配列する(対称構成)のが一般的ですが,上側と下側では下側がより強度を要求されることから,上側の層のひき板の基準を,下側の層よりやや緩くした「非対称構成」の基準も設けられています.

    構造用集成材の強度性能は,曲げヤング係数(たわみにくさの指標:記号E)と曲げ強さ(破壊時の最大曲げ応力:記号F)の組合せで,「E○○-F○○」というように表示されます.

    E-Fの等級は樹種やひき板の構成等により何種類もありますが,業界団体の日本集成材工業協同組合では,主に生産される構造用集成材(標準集成材)の強度等級を,下表のように示しています(抜粋).ただし,原木事情の変化等により,一般的に生産できる製品の強度等級や,その強度等級の製品を製造するための原料コスト等は変化していますので,詳しくは各メーカーとご相談願います.

    標準的な構造用集成材の強度等級(抜粋)

     区 分主 な 樹 種強 度 等 級
    異等級構成

    (対称構成)
    ベイマツ,サザンパイン等E120-F330
    E105-F300
    ヒノキ,ヒバ,カラマツ等E105-F300
    ベイツガ,ラジアタパイン,アラスカイエローシダー等E 95-F270
    スプルース,エゾマツ等E 95-F270
    スギ,ベイスギ等E 75-F240
    同一等級構成

    (4枚以上の
    ひき板を積層
    したもの)
    ベイマツ,サザンパイン等E120-F375
    ヒノキ,ヒバ,カラマツ等E105-F345
    ベイツガ,ラジアタパイン,アラスカイエローシダー等E 95-F315
    スプルース,エゾマツ等E 85-F300
    スギ,ベイスギ等E 75-F270

     なお、構造用集成材のJAS認定工場については,合板,フローリング,集成材等のJAS登録格付機関である(財)日本合板検査会の各検査所へお問い合わせ下さい.(HY)

    Q. 「構造用集成材」と「造作用集成材」のそれぞれの特徴を教えてください.

    A. 集成材はJASによって構造用集成材と造作用集成材とに分けられ,構造用集成材は一定の強さをもっていることが必要です.このため,挽き板の継ぎ方や積層枚数が定められています.

    造作用集成材は階段の手すり,和室の長押など,身近に使われています.

    また,構造用集成材も造作用集材も共に表面に化粧用の単板を張って,それぞれ化粧貼り構造用集成材,化粧貼り造作用集成材と呼ばれています.(TK)

    Q. JASマークのついた製材品の種類と入手方法を教えて下さい.

    A. 製材品のJAS規格(日本農林規格)には,

    1. 柱,梁(はり)など木造住宅の構造部材を対象とした「針葉樹の構造用製材」
    2. 鴨居,敷居,壁板などの造作材を対象とした「針葉樹の造作用製材」
    3. 床・壁・屋根などの下地材を対象とした「針葉樹の下地用製材」

    などの規格があり,それぞれその用途に応じて,本来要求される性能(構造用や下地用であれば主として強度性能.造作用であれば見た目の性能等.)により,いくつかの等級に区分することで,製材品が合理的で有効に利用されることを大きな目的としています.

    ところが実際の流通では,例えば構造用の柱であっても見た目の美しさを要求されたり,断面寸法の合理化のために構造用製材の規格に定められた規定寸法以外のものが求められるなどのため,注文を受けた性能や品質のものをJASの対象となるかどうかに係わらず供給せざるを得ないといったことがあります.

    また製材品の特性からは,接着製品と違ってJASによる表示が無くても相対取引などでは外観で判断できることなどから,これまで一般的にJAS表示品の要求が非常に少なく,他品種少量生産の中での表示の手間もあって,JASマーク表示品の流通が,積極的に活用いただいている特定の地域を除き,未だ少ないというのが現状となっています.

    一部のハウスメーカーや大工・工務店さんなど,JAS規格の主旨をご理解下さりJAS品をご指定いただくユーザーの方が増えていけば,製材のJAS表示品の供給体制ももっと整備されてゆくはずなのですが・・・.

    もちろん本来こういった事は,供給側から整備するべきもので,そちらの努力が第一ですが,ユーザーの方々にもぜひJAS表示品という指定を下さるようお願い致します.

    なお,製材の各規格のJAS認定工場は,各府県の木連(製材JAS登録  格付機関全国木材組合連合会支所)へお問い合わせ下さい.(HY)

    Q. 家具などから放散するのホルムアルデヒドについて,何か基準はありますか.

    A. 食器棚及び育児用たんすについては,SGマークというマークがつけられている製品があります.

    SGマークは,Safety Goods(安全な製品)の略号で,製品安全協会が定めたものです.「構造・材質・使い方などからみて,生命または身体に対して危害をあたえるおそれのある製品について,安全な製品として必要なことなどを決めた認定基準を,製品安全協会が定め,この基準に適合していると認められた製品にのみつけられるマークです.」(製品安全協会パンフレットより)

    食器棚及び育児用たんすについてのSGマーク認定基準には,使用材料として育児用タンスの「Ⅰ型」にあっては,合板ではJASのF1,パーティクルボード,繊維板等ではJISのE0に,また育児用タンスの「Ⅱ型」及び食器棚にあっては,合板ではJASの(F1若しくは)F2,パーティクルボード,繊維板等ではJISのE2に適合するものであることとしている他,表面に接着剤を使用して加工を行った場合も各々同等の放散量基準をみたすこと,また塗料についてはホルムアルデヒドを含まないものであることなどを規定しています.(HY)

    Q. 住宅内のホルムアルデヒド気中濃度について,何か規制はありますか.

    A. 住宅室内空気中のホルムアルデヒド濃度等について,法的な基準は日本にありませんが(平成10年6月現在),近年社会問題となっている現状に鑑み,厚生省で組織された「快適で健康的な住宅に関する検討会議」が,平成9年6月にホルムアルデヒドの室内濃度指針値を提案しています.

    この指針値(「30分平均値で0.1mg/m3以下」→室温23℃の下で約0.08ppmに相当)は,住宅室内のホルムアルデヒド濃度についての規制を定めたものではありませんが,居住者の健康被害を減少させるための目標と言えます(居住者がアレルギーや化学物質過敏症などの場合を除きます).

    また,平成8年7月,産官学の共同により発足した「健康住宅研究会」では,発足から平成10年3月までの間,健康に影響を与える可能性のある揮発性有機化合物(当面優先的に配慮されるべき物質としてホルムアルデヒド,トルエン,キシレン,木材保存剤,可塑剤,防蟻剤を選定)に関して調査・検討を重ね,室内空気汚染の低減のための「設計・施工ガイドライン」及び「ユーザーマニュアル」を策定し,室内空気環境の良い住宅をつくっていくための設計・施工者としての考え方や住まい方の提案を行っています.(HY)

    Q. 木質建材のホルムアルデヒド放散量の基準について教えて下さい.

    A. ホルムアルデヒド放散量の基準は,JAS(日本農林規格)では普通合板,コンクリート型枠用合板,構造用合板,特殊合板及びフローリングの規格に,JIS(日本工業規格)ではパーティクルボード及び繊維板(MDFのみ)の規格に規定があります.

    基準の数値は,一定枚数の試験片をデシケータという密閉容器に入れて20℃で24時間放置した時,一緒に入れた水に吸収されたホルムアルデヒドの水中濃度です.

    このデシケータ値は一般に問題となる気中濃度(単位ppm等)とは別のもので,デシケータ値から気中濃度を推定するには,その建材の使用量,部屋の容積,温湿度,換気量等が大きく影響し,また建材からの放散量は十分な換気が行われれば時間経過とともにある程度のレベルまでは急速に低減するといったこともあるため簡単ではありませんが,影響する因子を考慮した推定式などが提案されています.

    最近,ホルムアルデヒド等の化学物質による室内空気汚染が大きな社会問題となっていますが,合板などの木質建材でも価格を抑えられた中でホルムアルデヒド放散量の低減に各メーカー努力されており,全般的には放散量レベルの低い製品がかなり普及してきていると言えます.

    なお,JASのF1~F3の基準は,低ホルムアルデヒドである旨の表示をする場合のみ適用する任意基準であり,Fの表示がないからホルムアルデヒド放散量がF3の基準を必ず超えているとか,F3が最悪レベルであるとかいうことではありません.

    一方,対象となる製品は違いますが,JIS表示品はE0~E2の何れかに分類されます.(HY)

    Q. 木材に関する資格にはどんなものがありますか?

    A. 一級および二級建築士の他に,木造二階建て以下で延べ床面積が300平方m以下の木造建築物の設計・施工ができる木造建築士や建築施工管理技師があります.

    不動産に関しては,不動産鑑定士,土地家屋調査士や宅地建物取引主任者が,インテリアや内装については,インテリアプランナー,インテリアコーディネイター,キッチンスペシャリストやマンションリフォームマネージャーがあります.(YF)

    Q. 集成材のホルムアルデヒド放散量についての基準はありますか?

    A. 集成材のJAS(日本農林規格)及び構造用集成材のJASには,現状ではホルムアルデヒド放散量の基準は設けられていません.

    しかし,集成材からのホルムアルデヒド放散がどの程度のレベルであるかということは,ユーザーにとって大きな関心事であると思います.

    ただ,集成材では合板に比べて断面が大きくなるので,普通合板などのJASによる試験方法を準用した場合に,デシケータという限られた大きさのガラス容器に入れる試験片の形状寸法や,接着層の断面が露出する木口面の取り扱い,合板などの面材に対して実際の使い方や使う量の違いを気中濃度への影響としてどのように評価するか.などが課題としてあると考えられます.

    このような状況の中で,これまで様々な方法により集成材のホルムアルデヒド放散量についての試験が行われてきたのが実情ですが,業界団体の日本集成材工業協同組合と,集成材のJAS格付機関である財団法人日本合板検査会では,評価の統一を図るために一定の方法を定め,依頼検査における標準的な方法を定めています.

    集成材のホルムアルデヒド放散量についての依頼検査は,財団法人日本合板検査会の各検査所へご連絡下さい(近畿四国地域は同検査会大阪検査所が管轄しています.連絡先:06-6685-0255).(HY)

    Q. 日本中どこの材木屋さんに行ってもある,標準的な材木のサイズってあるんでしょうか? あるとしたら,それはどういうサイズですか? 畳みたいに,地方によって違ったりするのでしょうか?

    A. 標準的な木材サイズはあります.話が長くなるので簡単にしますと,大阪ですと105×105(mm),30×105,30×60,30×30等の断面です.しかし地区により異なります.

    全国共通なのはカナダ,アメリカからの輸入のツーバイフォー材です.これは最近ホームセンターでも販売しています. (KN)

    Q. 強度等級区分法について教えてください.

    A. 強度等級区分法には,目視等級区分法と機械的等級区分法があります.前者は,集中節径比,繊維走行,割れ,変色などから品質を区分する等級区分法です.これに対し,後者は材料の強度推定に役立つヤング率(弾性率)などを非破壊的に測定し,それに基づいて,自動的に強度等級を区分する方法で,視覚的に検知できない強度因子の影響も評価できるため,比較的高精度で強度区分を行うことができます.機械的等級区分を目的として木材のヤング率を測定する機械をグレーディングマシンといいます.求められたヤング率によって,E110あるいはE130などの等級区分を行います.E110は,ヤング係数が100~120×103kgf/cm2にあることを示しています.樹種ごとに,ヤング率と強度の関係を明らかにし,それに基づき,基準強度や許容応力度で区分した材を,MSR材あるいはE-rated材と呼びます. (TS)

    Q. 品確法で 耐震等級2級とか1級とかがあるそうですが,どのように違うのですか?どちらが上なのですか?

    A. 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」略して品確法の性能表示関連告示が2001年7月に発表されました.これによると,建築基準法で要求している住宅が満たすべき耐震性をもつものを耐震等級1,その1.25倍の耐力を有するものを耐震等級2,1.5倍の耐力を有するものを耐震等級3と決めています.ちなみに,台風等級では建築基準法で要求している耐力の1.2倍以上あるものを台風等級2と定めています.等級の数が大きいほど耐力が大きいことを示しています. (MM)

    Q. 今回改正された建築基準法では木材についても鉄などと同じように基準強度という概念が導入されましたが,従来の許容応力度との関係はどのようになっているのでしょうか?また,許容応力度に長期とか短期とかがありますがなぜですか?

    A. 基準強度は樹種や等級で分けられた材種の強度の下限値(5%下限値)を示しています.設計に用いる許容応力度には短期荷重(地震力,風圧力など)に対する短期許容応力度と長期荷重(屋根荷重のような固定荷重や家具などの積載荷重)に対する長期許容応力度があります.長期の荷重に対しては,時間とともに変形がじわじわと増加するクリープ変形が生じるため木材の耐力が小さくなります.短期許容応力度は基準強度の2/3倍した値です.これは荷重をかけた後,もとに戻るには強度の2/3程度の値までの力(比例限)にとどめるべきだとの考えからです.長期許容応力度は基準強度の1.1/3倍です.これは50年間荷重が掛かりっぱなしでも大丈夫なように定めた許容応力値です.3ヶ月程度の長期の積雪に対しては基準強度の1.43/3倍した値を,また,3日程度の短期の積雪に対しては基準強度の1.60/3倍した値を許容応力度として用いることと規定されています. (MM)

    Q. 今回改正された建築基準法では,並列材とか木材強度の寸法効果とかいうものが出てきますが,これらは何ですか?

    A. 2000年6月に施行された改正建築基準法では木材の許容応力度は基準強度をもとに荷重継続時間に関わる係数を掛けるなどして算出する形をとっています.断面の大きな材は大きな欠陥をもつ可能性が高く,断面積に応じて基準強度が少しずつ異なります.このことを考慮して断面寸法による調整係数を基準強度の表とともに示すことにしています.

    並列材とは,例えば床根太は並列に何本かが並んで同一面材に釘打ちされたりします.この場合,もしどれか1本の根太が少し弱いとき,並列する根太が少しカバーしてくれるといった効果が期待できます.そのため並列材の集合としての総合的強度の下限値は個々の下限値より大きくなります.このことを考慮して,面材をはられた並列材の曲げの基準強度を1.15倍あるいは1.25倍することになっています. (MM)

    Q. 建て替えのために壊された住宅は全て産業廃棄物となるのでしょうか?ショベルカーなどで一気に解体している様子を見ていると,とてもリサイクルしているようにはみえないのですが……?

    A. 一般に,家屋解体といっても,その方法によってリサイクルの実態は異なります.一番リサイクルしやすい解体方法は,ゆっくり時間をかけて,大半を人手で行う完全分別解体ですが,これは経済的にも殆ど行われません.またその正反対の方法として,「ミンチ解体」と呼ばれる,大きな重機で分別など一切せずに壊してしまう方法ですが,これは出てくる廃材は全て混合物となり,御指摘の様に,リサイクルは不可能となり,現実的にこうした廃材はまともな廃棄物処理業者は,受入れを拒否,またはかなりの高額でしか引取しません.2001年5月に建設リサイクル法が施行されますが,こうしたミンチ解体は禁止されています.(残念ながら悪徳業者等は,これを行なっており,社会問題化していますが)

    実態としては,重機を使いながら,やはり人手で解体と分別を行う方法が現時点での最も現実的な方法であり,現場にて粗方の分別,例えば木材と瓦,ガラス,金属類,畳などを分けて,夫々を専門の業者が引き取るという方式で,夫々のルートでリサイクル化するという方法が取られています.こうした方法を分別解体と呼ばれていますが,建設リサイクル法では,家屋の解体作業は分別解体しなければならないとされており,施主がその責任を負うことになっています.よって,一般の人が家を建て替える時には,法律的にはその施主である人がこうした分別解体と,出てくる廃材のリサイクル義務を負うこととなっています.施行を前に,業界ではかなりの混乱が予想されています. (ボードメーカー勤務・TY)

    Q. 森林認証制度「FSC」とは,どのような制度ですか?

    A. 森林認証制度とは,「適正な森林管理」が行われていることを,一定の基準に照らして,独立した第三者機関が審査・認証する制度です.FSC(Forest Stewardship Council 森林管理協議会)による森林認証制度はその一つで,世界で最も広く展開しています.FSCが定める基準は,環境,社会,経済の3つの側面から見て適正な森林管理であることを要求します.つまり,FSCの認証を取得した森林管理主体(個人の林業経営者や林業会社,森林組合などのグループなど)は,適正な森林管理を行っているという「お墨付き」を得ることになります.FSCの認証を受けた森林から出る木材やそれを加工した木材製品には,FSCのトレードマーク(ラベル)をつけることができます.それにより,環境への関心の高い消費者が,森林破壊によって生産された木材製品を避け,選択的に環境にやさしい木材製品を購入することができます.

    森林認証制度には,FSCの他に欧州中心に展開するPEFC(Pan-European Forest Certification),アメリカで展開されている林産業界主導のSFI(Sustainable Forestry Initiative),カナダで展開されているCSA(Canadian Standards Association)などがあります. (シンクタンク勤務・DM)

    Q. 認証木材(certified wood)って何ですか?

    A. 環境等に配慮した適正な森林管理により生産された木材であると認証されている木材のことです.FSCの森林認証制度では,森林管理についての認証だけでなく,認証を受けた森林から出た木材またはそれを材料とする製品であることを審査・認証するCoC(Chain of Custody)認証というプロセスがあります. (シンクタンク勤務・DM)

    Q. 「ISO14000シリーズ」って何ですか?

    A. ISO14000シリーズは,ISO14001という環境マネジメントシステム(EMS: Environment Management System)に関する規格とそれに付随するガイドライン等の総称のことです.ISO 14001の認証を取得した企業は,環境負荷の少ない企業経営を実現するためのマネジメントシステムを確立しているということが保証されます.ISO14001はプロセス基準またはシステム基準と呼ばれていて,環境マネジメントの結果がどうかということよりも,その企業が定めた目標を達成するための経営システムが確立されているかどうかが審査対象となります.システムについての認証システムであるため,製造業だけでなく林業を含むありとあらゆる業種で認証取得が可能です.それに対してFSCの森林認証制度は,パフォーマンス基準と呼ばれ,経営システムよりも,定められた目標が達成されているかどうかという結果の方が主な審査対象となります.

    ISO14001は,「組織の継続的な環境保全のための仕組み(環境マネジメントシステム)」に対する要求事項を規格化したもので,この要求事項は,大きく「環境保全のための仕組み」と「環境保全を継続的に効果的に進めるための経営の仕組み」に大別されています.

    「環境保全のための仕組み」は,その組織の持つ重大な環境影響の特定,環境方針と目標・実現計画の設定,法規制の特定と遵守方法の設定,必要な場合には手順書による維持管理方法の確立,及びこれらの実施,監視が要求されています.また,「環境保全を継続的に効果的に進めるための経営の仕組み」は,環境保全組織とその責任・権限の明確化,必要な認識・訓練・能力づけのための教育制度の設定,文書体系の構築,文書・記録類の管理,問題発生時の是正処置実施,定期的な経営層による見直し,などが規定されています.森林管理の分野ではISOとFSCが良く比較されますが,ISOの方が文書整備を緻密に行う必要があると言われています. (シンクタンク勤務・DM)

    ※ISOは,International Standards Organization(国際標準化機構)の略.ISOは国別の規格管理機構の国際的な連合体で,工業製品などについて世界統一の規格を定めているが,14000シリーズ(環境マネジメントシステム)の他,9000シリーズ(品質管理システム)など,経営システムについての規格も定めている.

    Q. グリーン材,KD材とは何のことですか?

    A. グリーン材は英語のGreen Woodの略で,一般的には伐採直後の木材のことです.乾燥現場では丸太から製材された多くの水分を含み,まだ乾燥過程を経ていない木材をさし,日本語では生材とも言われています.なお,丸太のまま長期間にわたって放置され既に乾燥が始まっている場合もありますから,具体的に含水率何%以上の木材をさすかは限定されていません.

    KD材はKiln Dry Woodの略で,乾燥機(Kiln)を用いて人工的に乾燥させた木材を意味します.天然乾燥(Air Dry)だけの木材は厳密に言えばKD材には当たりません.近年外国から多くの木材が輸入され,その梱包に「KD」という表示をよく見かけます.これらの木材は,人工乾燥処理済みであることがわかります.

    日本では,木材の乾燥程度を日本農林規格(JAS)によって規定しています.建築用針葉樹製材の乾燥度を,含水率によって三種類に区分しています.すなわち,含水率25%以下をD25,20%以下をD20,15%以下をD15とし,これらの記号・数値が表示されている柱材などを見かけることがあります.

    従来の木造住宅建築では,製材して間もない乾燥の不十分な木材が多く使用されてきましたが,近年強度や寸法精度の高い構造用材料の要求が高まり,乾燥材が次第に普及しつつあります. (YT)