最新木質建材[処理木材]
301 防腐処理木材
preservative-treated wood

説明  菌類を主とする微生物や昆虫等による生物劣化(biodeterioration)被害を軽減するために木材防腐剤を用いて処理した木材を防腐処理木材 と呼んでいます.木材防腐剤には,油性(各種クレオソート油およびそれらとコールタールとの混合油),油溶性(油性溶媒,揮発性溶媒,廃油などに薬剤をとかしたもの),水溶性(Cu, Zn, As, Na, K, Cr,Fなどの塩類を水にとかしたもの),および乳化性(水に乳化させて用いるもの)のものがあります.ただし,近年ではヒ素(As)やクロム(Cr)を使用しない薬剤が主流となっています.
 保存処理には,減圧,加圧・減圧,接着剤混入などの方法があります.
 素材の調整法としては,インサイジング(incising)加工が,木材への薬液の浸潤を促進するとともに木材の乾燥を促進して,大きな割れの発生を防ぐ効果もあるので用いられることがあります.
 これら木材防腐剤には,農林業における殺菌剤のような短期間の抗菌効果ではなく,数十年にもおよぶきわめて長期の効力が期待されています.


インサイジング加工
 ノミ型の刃で四材面に 3,000~5,000個/m2の密度で深さ10mmの傷を作ります.これにより薬剤の浸潤を助け,均一な防腐層をつくることができます.傷を作っても,木材の強度はほとんど低下しません.
種類  性能による区分として,JASによる規定があります.これには,使用環境に応じて K1から K5まで区分され,薬剤の種類と1m3あたりの吸収量,樹種,浸潤度が示されています.
規格
  • JAS「針葉樹の構造用製材の日本農林規格」
  • JIS A 9104-1995「加圧式クレオソート油防腐処理まくら木」
  • 林野庁監修「保存処理製材の適正製造基準」
 その他に
  • 薬品処理木質外構部材の製造基準並びに解説
  • 木質建材等認証推進事業(AQ事業)の「屋外製品部材」「保存処理材」
  • 車両用木製防護柵部材
  • 保存処理材-2
があります.

 その他の規格として
  • JIS K 1570 「木材保存剤」
  • JIS A 9002 「木質材料の加圧式保存処理方法」
  • JIS K 1571 「木材保存剤-性能基準及びその試験方法]
などがあります.
用法  主として建築用構造部材(土台,大引,根太,床束など)に使用される他,屋外で接地あるいは暴露状態におかれ,厳しい劣化環境で使用される土木用材(土留など)や,外構部材(木橋,デッキ,ジェットコースターなどの遊具,遮音壁,転落防止柵)に用いられています.
物性  物性は素材とほぼ同じですが,薬剤が木材中に含まれていますので廃棄やリサイクルの際には注意する必要があります.
使用例
木橋


木製ジェットコースター