紙や新聞紙の原料としてパルプ,ミツマタ,楮(コウゾ)などを耳にしますが,木のどの部分からできているのですか? また原料の違いでどう変わるのですか?
紙は植物繊維を水で分散させ,無機または有機添加物を加えたものを漉いて作ります.その原料となるパルプとは木材や繊維を含む植物からセルロースを取り出したものです.
セルロースで構成されている原料はすべてパルプの原料になり,木材のほかにワラ・タケ・ケナフ・バカスといった農産廃棄物や草本からの利用もあります.木材パルプ(針葉樹パルプ,広葉樹パルプ)がその生産量のほとんどを占め,それ以外の植物から生産されるパルプは10%未満です.日本のパルプ製造はほとんどが木材を原料とするので,ここでは木材パルプについて説明します.
パルプは原木や廃材チップ・古紙等から,機械的方法または薬品を使った化学的方
法など原料に適した方法で工場で生産されています.木材成分は,セルロース(約半
分を占める)・ヘミセルロースの繊維成分と,繊維間を結合しているリグニン・樹脂
等で構成されています.
製造法別では機械パルプと化学パルプに分けられ,前者は機械的力で繊維を引き離して作り,したがってパルプの成分は木材とほとんど同じ状態です.新聞紙,週刊誌,紙タオルに利用されています.後者は繊維間を結合しているリグニンを薬品で溶解させてパルプにする白色度が高い上級パルプです.またパルプの再利用としては古紙を水に分散させ,脱インキ処理をした古紙パルプがつくられています.
一方,コウゾ(楮),ミツマタ(三椏),ガンピ(雁皮)は現代の和紙の代表的な3原料で,樹皮の繊維を利用しています.とくにミツマタは栽培が容易で,その靭皮(じんぴ)繊維は繊細で耐伸・耐折強度,弾力性及び光沢性に富み,機械で漉くことができるので,証券紙,紙幣紙等の高級紙原料として使われています.(JY,RK)