木材は方向によって強さが違いますが,どの程度違うのですか? また,それはなぜですか?
木材はかつて生き物,すなわち樹木だったので,細胞壁でできています.自らの樹体の鉛直方向の重さに耐えるとともに,風や雪による曲げの応力に対しても耐えねばなりません.このような応力はもっぱら軸方向の圧縮や引っ張り応力です.木材はそれに耐えるために,軸方向に強く,しかも軽いという特長をもっています.
セルロースの結晶の強さをうまく活かして,かつ,ミクロな欠陥があっても影響が少ないように,その結晶の糸を束ね,その束ねたものをさらに束ねて,明石海峡大橋のメインケーブルを超ミクロにしたセルロースのワイヤーを編んで作られたのが樹木の細胞壁です.このようにしてできた壁をもち,かつ中空の,細長い細胞が整列して樹木はできあがっています.
したがって,木材の軸方向の強度は,同じ重量の鋼鉄よりも強いのです.その代わり,それに直角方向にはあまり強くなくてよいので,軸方向の強さに対して1/10とか1/20程度の強さしかありません.空手で木材の板を割るのを見かけますが,もちろん弱い方向に割っています.乾燥割れで既に目に見えないようなひびが入っている板ならさらに弱いでしょう.(MM)