ピアノやバイオリンの響板には何故トウヒ属の木材が使われるか?
木製の楽器類には,種類,部位に応じて,特定の樹種の木材が使用されている.バイオリンの表板やピアノの響板には,ドイツトウヒ,スプルース,アカエゾマツなどのトウヒ属の木材が使用されている.また,樹種に加えて,密度,年輪幅,材色などについて厳しい選別が行われている.
振動的な性質に限ると,これらの樹種の木材は,密度が比較的小さく,繊維方向の音速が大きく,振動の減衰が小さい特性をもち,したがって,振動のエネルギーが音のエネルギーに変換される効率(音響変換効率)が高いという楽器響板にとって有利な性質を備えている.
ギターやマンドリンの表板にもこれらの樹種が使用されている.和楽器である琴や琵琶の表板には,キリ材が使用されるが,この樹種も音響変換効率が高い樹種である.(MN)