最近新しい乾燥法がいろいろと開発されたと聞きますが,どんな方法なのでしょうか?
スギ材を目標の含水率まで乾燥するには多くの時間がかかり,乾燥経費を販売価格に反映しにくいという問題があります.この乾燥経費を削減するための新しい乾燥法の開発が強く望まれ,多くの研究機関や企業で検討されてきました.現在実用化あるいは有望視されているのは,100℃以上の高温度域で木材中の蒸気圧を著しく高めて急速に水分を移動させる方法です.高温処理のため乾燥に要する単位時間あたりのエネルギーコストは高いものの,乾燥時間を短縮することによって単位容積あたりの乾燥経費を低減することを基本としています.加熱には蒸気,高周波,溶融パラフィン等が使用されています.
[1]高温乾燥法
100~120℃の高温蒸気に耐久できる従来の蒸気式乾燥機の発展型です.乾燥時間は従来の蒸気式乾燥の1/5~1/2に短縮でき,材面割れも少なく,ヤニの滲出防止効果も期待できます.一方,高温度で処理するために,収縮率の増大,曲がりなどの狂い,内部割れ等による歩留まり率の低下,変色や強度等の品質低下が問題となります.なお,同機で80℃以下の乾燥も可能ですが,装置の価格が高いのでこの温度帯域で乾燥すると逆に乾燥コスト高となります.
[2]高周波・熱風複合乾燥
木材中の水分を高周波で加熱する方法と熱風乾燥を組み合わせた乾燥法です.断面積の大きな木材,例えば柱や梁材などでは木材内部の水分が高周波によって効率よく加熱されるため,乾燥時間の短縮効果があります.一方,装置の価格が高く,乾燥中に多くの電力を消費するためランニングコストが高くつくという問題があります.装置の低廉化と高周波電力の投入時間短縮等乾燥スケジュールの確立が待たれます.
[3]パラフィン液相乾燥
高温で溶融するパラフィン液中に木材を浸せきし,木材内部の水分を加熱して蒸気圧を高めることによって急速に乾燥する方法です.約24時間で乾燥は完了できます.一方,高温処理のために内部割れの危険性が高く,乾燥後に木材表面に付着したパラフィンを除去しなければならなく,また乾燥で減少したパラフィンを補給するなど,乾燥に要する諸経費を総合的に検討する必要があります.
このほかにもセラミックによる遠赤外線乾燥,加圧容器による過熱蒸気乾燥,マイクロ波加熱乾燥等が提案されていますが,乾燥原理は前述の[1]および[2]に属します.
以上の方法は乾燥する木材の種類,寸法,使用目的に応じて使い分けする必要があり,すべての用途の木材にオールマイティではないことを付け加えます.いずれの乾燥機も高価ですから,導入に当たっては慎重に選択するよう心がけてください.
(YT)