スギ柱材を人工乾燥させるのに,どのくらいのコストがかかるのですか?
木材乾燥コストは,[1]機械装置の償却・維持の設備費,[2]機械の稼働に要するエネルギー費(ランニングコスト),[3]桟積み,機械操作に係わる人件費の合計で示されます.
このうち[1]と[3]は木材の種類を問わず基本的に掛かる経費であり,[2]は乾燥時間に大きく依存するため木材の種類に影響されます.
スギ心持ち柱材の乾燥法別の乾燥コストを表に示します1).現在広く普及している乾燥温度70~80℃の蒸気式乾燥機では,約10,000円/m3であることがわかります.
某県で使用されている蒸気式乾燥機について詳細に分析された結果をみると2),乾燥コスト11,740円/m3が報告されています.このうち,[2]の機械稼働に要するエネルギー費は5,950円/m3で全体の51%を占めています.
装置費とランニングコストを削減してスギ柱材の低乾燥コスト化を目的に,冷凍コンテナーを利用した乾燥機3)が開発されています.この装置のランニングコストは2,610円/m3であったと報告され,蒸気式乾燥機の半分以下の経費であることがわかります.本乾燥機は,高断熱,高気密の壁体からなり,乾燥機から排出される熱を回収・再利用する熱交換機を附帯し,また熱源は灯油温水ボイラーを用いています.
なお,ヒノキ柱材(12cm角・背割りあり,含水率25%まで乾燥)の乾燥コストは5,200円/m3であり,スギ柱材に比べて如何に低コストで乾燥できるかがわかります.(YT)
表 スギ心持ち柱材用の各種乾燥法1)
乾燥方法 |
温度範囲(℃) |
乾燥時間(日) |
乾燥コスト(円/m3) |
乾燥コストに及ぼす影響 |
除湿乾燥(低温) |
35~50 |
28 |
16,000 |
ランニングコスト |
蒸気式乾燥(中温) |
70~80 |
14 |
9,400 |
装置費,ランニングコスト |
蒸気式乾燥(高温) |
100~120 |
5 |
7,200 |
装置費 |
燻煙乾燥 |
60~90 |
14 |
5,500 |
|
高周波・熱風複合乾燥 |
80~90 |
3 |
9,500 |
装置費 |
組み合わせ乾燥法 |
蒸射・減圧前処理 |
120 |
0.5 |
7,000 |
装置費 |
天然乾燥 |
10~30 |
30 |
蒸気式仕上げ乾燥 |
70~80 |
4 |
組み合わせ乾燥法 |
自然乾燥 |
10~30 |
10 |
10,000 |
装置費,ランニングコスト |
高周波加熱・減圧乾燥 |
50~60 |
1 |
参考文献
1)久田卓興:建築知識,42(10),pp.218-220(2000)
2)河崎弥生:建築用針葉樹製材のための人工乾燥材生産技術入門,pp.239-246(1996)
3)谷口義昭ほか5名:木材工業,50(5),pp.210-214(1995)