木材の人工乾燥法についてその現状を教えて下さい.
近年木材の人工乾燥法についての質問で最も多いのは建築用針葉樹材への適用で,その中でも特に多いのはスギ材です.人工乾燥としては約90%が蒸気式乾燥法であり,その他が10%です.乾燥法別にその特徴と問題点をあげると,以下の通りです.
[1]蒸気式乾燥法
重油又は重油・木くず焚き併用ボイラーからの熱源を基に,乾球温度と湿球温度を制御しながら乾燥操作する方法です.従来は70~80℃の乾燥温度でしたが,乾燥時間の短縮を目的として最近では100~120℃で処理が可能な乾燥機の導入が多くなっています.なお,100℃以上で乾燥する方法を高温乾燥法と呼ぶこともあります.高温,高湿の基では設備の損傷が激しく,その耐久性が問題となります.最近導入される機械の多くは,コンピュータ等の電子機器の発達によって,乾球温度と湿球温度が自動制御され,乾燥の自動化が図られています.
[2]高周波・熱風複合乾燥法
高周波加熱と熱風乾燥を組み合わせた乾燥法であり,前述の蒸気式乾燥法よりも乾燥時間を短縮することを目的として開発されました.大容積の木材の乾燥,乾燥スケジュールの確立,装置価格の低減化に向けてなお一層の改良が加えられています.
[3]高周波加熱減圧乾燥法
高周波加熱と減圧乾燥を組み合わせた乾燥法であり,乾燥時間の大幅な短縮化が図られます.現在普及している乾燥法では最も乾燥時間が短いとされています.一方,装置価格が高く,乾燥中に電力を多く消費するために,ランニングコストが高くなるという欠点を有しています.現在,天然乾燥と連携して乾燥することによって乾燥コストの削減化が検討されています.
[4]熱風加熱減圧乾燥法
減圧缶の中に木材を入れて熱風で加熱し,その後減圧,大気圧に戻して再び加熱し,減圧する,この操作を繰り返すことによって乾燥を促進する乾燥法です.装置価格が高いことが問題点となっています.また,機密性の高い乾燥室からファンによって空気を排出することで乾燥室内を大気圧よりも幾分負圧にして乾燥する方法があります.後者の乾燥法を減圧乾燥法に分類するには疑問が残ります.乾燥時間は蒸気式乾燥法と同程度です.
[5]燻煙乾燥
大量に収容できる燻煙乾燥炉に丸太を置き,廃材等を燃焼させた空気を循環させながら乾燥させる乾燥法である.温度や湿度の調整がラフであるために割れが生じたり,また目的とする含水率まで乾燥するには至っていません.現在では,乾燥と言うよりも熱処理効果による丸太の材質改良に主眼が置かれる傾向にあります.なお,乾燥コストの観点からみるとメリットがあるため,今後木材乾燥用に積極的な技術開発が待たれます.
[6]その他
上にあげた乾燥法以外に一部実用化している乾燥法として次のものがあります.
・パラフィン液相乾燥法 ・太陽熱利用乾燥法 ・地熱利用乾燥法
(YT)