木材を乾燥させるのには,どんな方法があるのですか?
木材に限らず物を乾かすには,水分を内側から外側に移動させる必要があります.水は高いところから低いところに流れるように,木材中の水分は蒸気として高い気圧から低い気圧に向かって移動します.したがって,木材の内側を外側よりも高い蒸気圧にする必要があり,このために外部から熱(「温度」)を加えて内部水分を加熱することによって蒸気圧を高めます.熱はこの駆動力を発現するために必要です.また,木材外周の空気圧を強制的に下げると木材内外で蒸気圧差を生じて水分が移動します.この方法を利用したものが減圧乾燥法です.
木材表面に移動した水分は容易に蒸発しますが,あまりに蒸発が激しすぎると表面が速く乾きすぎて内部との間に大きな含水率差を生じます.このとき木材表面に割れが生じることがあります.この割れを防止するには,表面蒸発を抑える,すなわち木材外周の「湿度」を調整する必要があります.さらに,温度や湿度を木材表面に均等に分布させて,均一に乾燥させるために適度の「風」も必要となります.
以上のように,木材を乾燥させるには「温度」と「湿度」と「風」が必要で,これらを乾燥の3条件と呼ぶことがあります.
木材を乾燥させる方法は,大きく2つに分けられます.一つは自然に存在する乾燥の3条件によって「乾く」天然乾燥法と,もう一つは人工的に機械で乾燥の3条件を作り出して「乾かす」人工乾燥法があります1).前者は自然の成り行きに依存するために,季節変動が大きく,乾燥の3条件が制御できないため割れなどの防止が難しく,計画生産も不向きな乾燥法です.一方,後者の人工乾燥システムを導入することで,時間の短縮と計画生産が可能となるため,現在乾燥機の導入が積極的に検討されています.
(YT)
参考文献
1)河崎弥生:建築用針葉樹製材のための人工乾燥材生産技術入門-第2版-, pp.19-22(1996)