なぜ木材の乾燥が必要なのですか?そのメリットは何ですか?
木材は乾燥すると寸法が縮む性質があります.私たちが生活する住宅では,新築後まもなく柱と鴨居,柱と敷居の接合部分に隙間が生じたり,板張り壁の継ぎ目が透いたり段差ができたりします.きれいな柱面に割れも出たりします.また,建築後しばらくすると,釘や接着剤で留められている床材や階段の踏み板がずれて,歩くたびに床鳴りがしたり,さらに時間が経過すると,ドアやふすまなど建具類の開閉時にきしみを生じ,壁面のクロスに亀裂が入ることもあります.さらに,木材中の水分(多くの場合,弱酸性から強酸性の範囲を示す)で構造強度を保持する緊結金具を腐食させることも報告されています.これらのトラブルの多くは,木材中の水分および乾燥に伴う寸法変化に原因します.
昔は建築に多くの時間を費やしていたため,建築中に木材が乾燥していました.したがって,乾燥による寸法変化は建築中に修正できたため問題は発生しませんでした.近年は建築部材のプレカット化や合板やボード類による乾式工法によって建築工期が著しく短縮されたため,木材は未乾燥なまま建築が完了し,入居後に乾燥によって前述のトラブルが生じてきます.消費者からのクレームがあまりにも多いと,在来工法の木造住宅に対するイメージは大きく低下します.
製材業界が十分に乾燥された木材を流通させることによって,住宅のトラブルやクレームは減少し,木造住宅の信頼性回復と着工数増大,ひいては国産材需要の拡大につながります.
(YT)