「都市の森林」って何ですか?
アルミニウムや鉄などの材料は,製造時に大量の炭素を放出するだけでなく,できあがった製品の中に炭素をまったく含んでいません.それに対し,木材は,製造時の炭素放出量が少ないばかりでなく,木材として利用されている期間,すなわち,燃えたり,腐ったりするまでの間は,固定された炭素を保管し続けてます.木造住宅や木材製品は炭素貯蔵庫としての役割を担っているのです.さらに,炭素貯蔵量をマイナスの放出量と考えると,木造住宅建築は,大気中の二酸化炭素を減らす計算になります.
1993年の我が国の全住宅に使用されている木材が貯蔵する炭素量は約1億4000万tです.これは我が国の全森林に貯蔵されている炭素量(7億8000万t)の約18%にも及びます.その内訳は,木造住宅が1億2859万t,非木造住宅が1,234万tであり,炭素貯蔵庫としての木造住宅の価値が評価されます.木造住宅群はまさに「都市の森林」なのです.
(MI)
参考文献
岡崎泰男, 大熊幹章: 炭素ストック, CO2放出の観点から見た木造住宅建設の評価, 木材工業, 53 (4), 161-165 (1998)
有馬孝禮:「エコマテリアルとしての木材」, 全日本建築士会 (1994)
有馬孝禮:木造住宅のライフサイクルと環境保全, 木材工業, 46 (12), 635-640 (1991)
有馬孝禮:資源・環境保全面から見た木造住宅の展開, 木材工業, 49 (11), 498-504 (1992)