樹木はどのぐらいの炭酸ガスを固定するのですか?
樹木は,二酸化炭素が約1.5kg,水が約300kg,日射エネルギーが約3760calあれば,光合成によって,約1kgの炭素化合物(ぶどう糖)を生産することができます.その際,副産物として約1kgの酸素が空気中に放出され,水のほとんどは水蒸気として空気中に放出されます.ただし,生産された炭素化合物の約半分は,樹木が生命活動を維持するための呼吸によって消費(二酸化炭素として放出)されますので,上記によって固定された二酸化炭素量は約0.75kgと計算され,これが幹,枝,根などになります.すなわち,樹木が生産し,私たちが材料として利用している木材とは,大気中の二酸化炭素が,太陽エネルギーの力で,セルロースやリグニンという形に変化したものなのです.いわば,「樹木とは二酸化炭素固定装置」であり,「木材とは炭素のかたまり」なのです.
我が国は,森林面積は約2,500万ヘクタール(国土の約3分の2)で,この森林が1年間に固定する炭素の量は約5,400万トンと概算されています.地球全体で考えると,約50億ヘクタールの森林が固定する炭素量は,1年間に約328億トンと推定され,これを二酸化炭素に換算すると約1203億トンとなります.森林の二酸化炭素の吸収能力(成長速度)は,森林生態系やそれを構成する樹種によっても異なり,熱帯多雨林で990,温帯常緑樹林で585,亜寒帯林で360トン/km2/年程度と試算されています.
(MI)
参考文献
伊藤弘二:今後のプレカットの工場経営と性能規定について, ウッドミック, No.185, 38 (1998)
只木良也:「環境資源としての森林」(樽谷 修編), 朝倉書店, 95-100 (1995)
R. H. ホイタッカー (宝月欣二訳):「生態学概説 -生物群集と生態系- (第2版)」培風館 (1997)