心持ち材は強いと聞きましたが,本当ですか?
一部の木材店や大工さんの中には「心持ち材は強い」という人がいますが,構造材として使う場合に,心持ち材と心去り材のどちらが強いかは一概にはいえません.これは木材の強度を決める因子は多く,心持ちか心去りかはその因子の一つに過ぎないからです.
ここで樹心付近の木材の特徴を述べておきましょう.まず濃色の心材と淡色の辺材とでは耐朽性(腐り難さ)に違いがあっても,強度には影響しないと考えてよいでしょう.強度に影響するのは心材と辺材の違いではなく,樹心付近にできる未成熟材です.未成熟材とは,髄から10~15年輪までの樹心に近い部分の材で,それ以降にできる成熟材と違って繊維細胞が短く,強度が低い材です.
現在,市場で流通している人工林で成育したヒノキやスギでは,成育の初期から日当たりのよい条件で育ちますから,樹心付近で年輪幅も広く,製材品中で未成熟材の占める割合が多くなり,むしろ強度が低くなる傾向にあります.したがって,必ずしも心持ち材が心去り材よりも強いとはいえないわけです.
(TS)