木材を塗装する場合に木材の道管をシーラーなどで埋めて木材の面を平滑にして仕上げを施したりするのが常例ですが,これはわたしの認識では木の呼吸を完全に止めて,木の収縮をなくしていると考えています.昨今,自然塗料というものを聞きます.これは従来の塗料が体にも環境にもよくないとして産まれた改良型の塗料だと思うのですが,耐水性があるのに木が呼吸出来るようなのです.この塗装法の違いによって木が呼吸できるできないは木材そのものにとってどのような影響を及ぼしているのでしょうか?
錯覚されていることがありますが,木は呼吸すると言うと何か生きているようで,そのため,木の呼吸を止めてしまうといけないように思われていますが,木材はすべて死んでおり,酸素を吸って炭酸ガスを出すといった呼吸はしていません.
木材が周りの湿度に応じて,水分を放出したり吸ったりする現象を,一般に,木材が呼吸すると表現しているために誤解されたのだと思われます.活きの良い魚はおいしいですが,活の良い木は,家具や構築物としては良い木ではありません.
木材にニスやペンキの塗膜性の塗料を塗ったらいけないとことはありません.ただ,水分を吸放出する性質を利用して冬の乾燥期に室内が過剰乾燥になるのを防ぐなど,木材の調湿作用を期待するのであれば,水ははじくが吸湿はするオイルフィニッシュなど木材の塗装方法を工夫する必要があります.ストラディバリウスのバイオリンはニスが塗られていますが,何百年たってもすばらしい音色を奏でます.
いけないのは屋外に出す場合に木に塗膜性の塗料を塗ることです.木は水が浸入するとそこで水分が増加して腐朽菌が繁殖することになります.屋外の塗装でニスやペンキを塗ってそれで完璧に水の浸入を防げたらよいですが,実際は木の割れ目から中に水が浸入します.そうすると木の中の水が逃げることが出来ず,余計に腐りやすくなります.
ところで,自然塗料というのは最近よく出回っていますが,自然塗料の大きな特徴とは,1つには溶剤がシンナー等の石油合成品でなくて自然系のオイル.まあ分かりやすく言うとてんぷら油みたいなもので顔料を溶かしている場合です.2つ目は,これは屋外用の塗料に使われています防腐剤や防カビ剤等の毒が入っていないということです.自然塗料というのは概ねオイルスティンですがオイルスティンは塗膜をつくらないタイプですから,木は呼吸(この言葉は勘違いを起こすので,水分の出入りと言いましょう)はします.その塗料は耐水性はありませんが,顔料が耐候性であれば,耐候性が発揮されます.
(KN)