最新木質建材[処理木材]
302 難燃処理木材
fire-retardant-treated wood

説明  難燃処理木材とは,薬剤の化学的作用と物理的作用を利用して木材を難燃化したものです.
 木材の防火薬剤による難燃化処理には,薬剤を内部に注入または浸透させる方法と,表面に防火塗料を塗布する方法があります.薬剤の処理による防火効果と作用原理は,加熱時に不燃性ガス(N2, H2O, CO2, SO3, NH3等)を発生して可燃性のガスを希釈するもの,薬剤中にハロゲンを含ませて可燃ガス中の水酸基(OH基)やアルデヒド基(CHO基)等の活性基の反応を抑制するもの,ZnCl,H 3PO4等の薬剤で木材中のセルロースを水と炭素に分解するもの,木材中に不溶不融性無機化合物を生成させ,木材への熱の遮断と酸素の供給を遮るものがあります.
 燃焼抑制効果を有する主な元素には以下のものがあります.

リン(P)
熱分解の段階で,炭化層を早期に形成し,内部への酸素および熱の供給を抑えます.この元素の化合物による処理は,処理される材の損傷や特性を変えることがほとんどなく,難燃薬剤として広く用いられています.
臭素(Br)
熱分解によって不燃性のガスを発生し,可燃性ガスの希釈や熱や酸素の供給を妨げ,木材表面の炭化を促進させて内部の燃焼を遅らせます.この元素の化合物による難燃処理では,濃度が高くなると木材の材質を劣化させるため,低濃度で使用することが望ましいです.また,臭素と同じハロゲン系の塩素(Cl),沃素(I),およびフッ素(F)も多少の防火効果を有しますが臭素に比べると防火性能は劣ります.
アンチモン(Sb)
単独では難燃効果をほとんど示しませんが,臭素や塩素等のハロゲン系元素を含む化合物と併用すると難燃効果が認められます.
窒素(N)
リンとの間に相乗効果を示し,難燃薬剤としてリンと窒素とを併用したものが最も多く使用されています.
ホウ素(B)
ホウ素系化合物は単独でも防火性能を有しますが,アルカリ金属のリチウム(Li),ナトリウム(Na),カリウム(K)等との併用によって難燃効果が増加します.

 以上の元素はそれぞれが燃焼の抑制に有効ですが,通常単独で用いられることは少なく,相乗作用,相加作用等の効果を得るために複数の元素を組み合わせて構成され,木材用の防火剤としてはリン・窒素またはリン・窒素・ハロゲン,ハロゲン・アンチモン,ホウ素・アルカリ金属のそれぞれを組み合わせたものが多く用いられています.
種類  JIS A 1322-1966建設省告示により不燃,準不燃,難燃に区分されます.これらの防火材料の他に新しく屋根材料も区分されることになっています.
規格
  • JIS A 1321-1994「建築物の内装材料及び工法の難燃性試験方法」
  • JIS A 1322-1966「建築用薄物材料の難燃性試験方法」
  • 国土交通省告示第1178号「不燃材料を定める件」(建設省告示第1400号参照)
  • 建設省告示第1401号「準不燃材料を定める件」
  • 建設省告示第1402号「難燃材料を定める件」
用法  建築用内装材,外装材
物性  素材とほぼ同じです.
使用例
外装に用いた場合


内装に用いた場合