最新木質建材[素材系]
106 ヤチダモ
Japanese ash (Fraxinus mandshurica)

 ヤチダモはわが国では北海道と長野県以北の本州北中部に自生し、東アジア北部の亜寒帯から温帯に広く分布しています。北海道ではミズナラやハリギリほどではないですがかなり蓄積があり、北見、石狩、日高、十勝産のものが名が通っていました。非常に成長が早くまた樹木としての形質がよいので、北海道ではかなり造林も行われています。
樹 形

 高さ 25m、直径 1mくらいになる落葉高木で、シオジときわめてよく似ています。樹幹はまっすぐで、樹皮はふつう灰褐色、縦の裂け目が入ります。小枝は太い。葉は 7~11枚の小葉からなる奇数羽状複葉で葉柄を入れた長さは 30~40cm、上下十字形に対生します。小葉は卵状楕円形から長楕円形、頂小葉のほかはほとんど柄がなく、そのつけ根付近に赤褐色の軟かく細かい毛を密生しているのが際立った特徴です。小葉は両端が尖り縁に細かい鋸葉をもっています。
材の特徴  辺材と心材の区別は明瞭で辺材は淡黄白色、心材はややくすんだ褐色で、シオジよりも暗い色の感じがあります。材に欠点は少なく木理は一般に通直ですが、時には杢がでるものがあります。環孔材で年輪がはっきりしており、一般に年輪幅は広く,肌目は粗いです。
材 質  気乾比重0.55、絶乾比重 0.52、圧縮強さ 44 N/mm2、引張強さ 120 N/mm2、曲げ強さ 95 N/mm2、曲げヤング係数9.5×103 N/mm2、衝撃曲げ吸収エネルギー9.0 J/cm2、含水率1%当たりの平均収縮率は接線方向0.31%、放射方向0.17%、硬さは木口面35 N/mm2、まさ目面13 N/mm2、板目面15 N/mm2程度です。
 材質は広葉樹材のうちではやや重硬という程度であって、ふつうシオジよりも少し重い。年輪幅の広狭で重さ、硬さ、強さがかなり違っていますが、一般に切削その他の加工は比較的容易で、乾燥も困難ではありません。シオジ同様アオダモ類に比べると材に粘りが少ないようです。
用 途  ヤチダモはわが国産の広葉樹材のうちではおそらく樹幹が最も通直であり、枝下が長く、横断面も正円に近く、欠点も少ない上に加工が比較的容易です。かなりの大材が量的にまとまって出材されるので、家具材を始めとして各方面に最も広く使われる有用材の1つです。家具材としては箱物、棚物、テーブル、椅子などの洋家具にふつうに使われ、また曲木の形でも用いられます。なお、ケヤキ、クリ、クワの模擬材に用いられます。建築材、車両材、船舶材としては装飾造作材の用途も構造材の用途も多い。運動具用の木材のうちでは最も多く使われるもので、野球バットの 80%くらいはヤチダモと推定されます。現在は多少生産が少なくなりましたが、タモ合板はシナ、セン、カバ、ナラ、ブナ合板と並んで国産広葉樹合板の一方の雄であって、アメリカ市場でJapanese ashの名で知られています。そのほか楽器材、土木材、枕木としての用途もあり、薪材としてもすぐれています。
参考文献 林業試験場編:「木材工業ハンドブック改訂 3版」、丸善、1982