最新木質建材[素材系]
105 ミズナラ(水楢)
Japanese oak (Quercus crispula)

 ミズナラは南樺太,南千島から北海道,本州,四国,九州にわたって広く分布し,南限は鹿児島県の高隈山です.また朝鮮,中国東北部にも見られます.
樹 形

 高さ30m,直径 1.5mにもなる落葉大高木で,樹幹はほぼ直立し,太い枝をはり出します.豪壮男性的な樹です.樹皮は灰褐色から暗褐色で不規則に縦の裂け目があり,老木になるとこの裂け目がやや深くなります.
材の特徴  ミズナラは環孔材のよい例で,年輪がはっきり認められます.辺材と心材の区別は極めて明瞭で,辺材は灰褐色,心材はくすんだ褐色です.ナラ材の特徴の1つは広放射組織があることで,これは接線方向に12~25細胞の幅もあり縦断面でその高さが 2cmをこえるものもでてきます.どの面でも肉眼ではっきり見ることができ,ことにまさ目面では模様のようになって現れ,虎斑(とらふ)とか銀杢(ぎんもく)といってナラ材のトレードマークになっています.
材 質  気乾比重0.68,絶乾比重 0.64,圧縮強さ 45 N/mm2,引張強さ120 N/mm2,曲げ強さ100 N/mm2,曲げヤング係数10×103 N/mm2,衝撃曲げ吸収エネルギー9.0 J/cm2,含水率1%当たりの平均収縮率は接線方向0.35%,放射方向0.19%,硬さは木口面35 N/mm2,まさ目面13 N/mm2,板目面15 N/mm2程度です.
 ミズナラの材は広葉樹材のうちでは重硬な方に入りますが,材質の変化の幅は著しく広い.成長が良くて年輪幅が広ければ重硬になり,成長が悪くて年輪幅が狭くなると軽軟になります.これは成長の良否によって孔圏の部分の幅があまり変わらず,重硬な孔圏外の部分の割合が成長いかんによって変化するからです.
 材の重硬なことに相応して収縮率も大きく,また割裂しにくい.一般に切削などの加工はやや困難です.人工乾燥は日本産材のうち最も難しいものの1つで,少し方法を間違うと広放射組織に沿って割れが入ります.
用 途  ミズナラは生産量が多く,硬質の環孔材として代表的なものであって,強度が大きく,しかも材面は重厚な感触を与えるという両面を兼ね備えているため,あらゆる方面に広く用いられます.まず,家具材として最も最適であり,またいろいろの器具材,機械材にも多く使われます.建築用としてはフローリング,窓わく・階段・手すり・ドアーなどの造作材や壁板などの内装材があり,また内装用合板の材料でもあります.
参考文献 平井信二:「木の事典」第1集,第2・3・4巻,かなえ書房