最新木質建材[素材系]
104 ケヤキ(欅)
Japanese zelkova (Zelkova serrata)

 ケヤキの天然分布は本州,四国,九州,朝鮮,中国,台湾で,肥沃な谷間などに好んで生育しています.また農家のまわり,神社,お寺の境内などにも多く植えられていて,いわゆる屋敷林の主な樹の一つです.さらに広く全国各地で庭園樹,公園樹,街路樹に多く使われています.天然木では宮城県から福島県へかけての阿武隈山地,伊豆天城山,奥利根,十和田湖周辺,熊野地方などが古くからその名産地として知られています.
 ケヤキは環孔材で年輪を明瞭に見ることができます.辺材と心材の区別もはっきりしていて辺材は淡い黄褐色,心材は黄色味がかった褐色から紅褐色です.木理がはっきりしているために,老大木ではよい杢が現れるものがあり,模様によって如鱗(にょりん,じょりん)杢,玉杢,鶉(うずら)杢,牡丹(ぼたん)杢などといわれています.
樹 形

 高さ35m,直径2mにもなる大高木で,老木ではもっと大きいものもあります.幹はふつうまっすぐで,これから分かれた枝がほうき状に上向きに伸び,広葉樹のうちでは極めて整った形をしています.樹皮は灰白色で,壮齢まではおおよそ平滑で多少横しわがある程度ですが,老木になると大きな鱗片になって剥げ,あとは独特の雲紋状の凹凸のある表面となります.
材 質  気乾比重0.69,絶乾比重 0.64,圧縮強さ 50 N/mm2,引張強さ130 N/mm2,曲げ強さ100 N/mm2,曲げヤング係数12×103 N/mm2,衝撃曲げ吸収エネルギー9.0 J/cm2,含水率1%当たりの平均収縮率は接線方向0.28%,放射方向0.16%,硬さは木口面45 N/mm2,まさ目面18 N/mm2,板目面20 N/mm2程度です.
 材はやや重くて硬いが,切削などの加工はそれほど困難ではありません.気乾比重の平均的な値として0.69が挙げられ,この比重に対応して強度も大きく,また大木で年輪幅の狭いものでは狂いが少ない.心材は水湿に対する耐久性が極めて高い.材の肌目は粗いが,仕上げ面を磨くとよい光沢が出ます.木理が明瞭で美しいこと,強度が大きいこと,耐久性があることの3拍子がそろっているので,わが国の広葉樹材では第1番の良材であり,構造材にも装飾材にもすこぶる広い用途をもっています.
用 途  建築材としては柱,梁などの構造材,階段,框,棚,床(ゆか)板,門と扉,板戸,障子・ガラス戸の腰板,洋室壁板,天井,床(とこ)まわりなどの造作材など,いずれの装飾材としても用いられます.昔から特に社寺建築材としてヒノキと並んで最も重要な木材でした.家具材では和家具に箪笥(たんす),座卓,火鉢,仏壇などがあり,また,各種の洋家具にも取り入れられています.器具材にも多方面で使われ,たとえば漆器の盆・椀,臼と杵,太鼓の胴,いろいろな柄類,機械の部材などがあります.車両材,船舶材でも構造材および内装材として最も重要なものであり,また橋の欄干や橋板,枕木にも多く使われてきました.特に最近までは電柱腕木として他に代えることができないとされていました.
参考文献 平井信二:「木の事典」第1集,第2・3・4巻,かなえ書房