木炭が高級な調理用燃料とされているのはどいうわけでしょうか?
世界で使用されている木炭のいろいろな用途のうち,やはり燃料として用いられる割合がもっとも多いのですが,これには暖房用などの生活燃料に使われるもののほか,炊事の用途に用いられるものが含まれています.わが国では,うなぎのかば焼きなど高級料理用の燃料として木炭が大変好まれていますが,この理由は1g当たり7000カロリーという高い発熱量のほか,煙や炎あるいはいやな匂いがでないこと,ウチワ1本で400~1000℃まで自由に温度調節できるということでしょう.
わが国の木炭のつくり方には,白炭と黒炭の2種類があります.白炭がカシ,ナラなどの堅木を原料とし,一方の黒炭がクヌギ,マツなどの軟材を原料とするほか,炭窯のつくり方によって最初の炭化温度が白炭の方が低くなるようにし,低温度域で刺激臭の有機性ガスを溜出させるようにします.また,両者の大きな違いは炭化の最終段階にあって,白炭の場合では空気を導入して温度を1000℃付近にまで上げ,その後消子で消火しますが,一方の黒炭では密閉したまま自然冷却して取り出します.
黒炭は白炭に比べはるかに火つきが良く,発熱温度も高いという特徴を備えています.しかし,白炭,その中でもウバメガシを原料とした備長炭が調理用の最高級炭とされているのは,固い,燃え方がおだやかで火力が強い,火もちが良い,ガス分がないということのほか,魚の焼き物などに最適の加熱温度である300℃付近で熱効率の良い赤外線を多く発生するためといわれています.
学問的に考えますと,白炭がもっているこれら究極の調理炭としての特徴は,最終段階で1000℃付近の高温に達するため,炭素化反応が進行することによって黒鉛微結晶に近い3次元構造が徐々に形成されてくることのほか,水素などの成分の含有率が低いためと考えられます.(YI)