天井や壁,家具などの表面に小さな虫穴がいくつもあいて,その近くに木粉が落ちていました.シロアリでしょうか?
新築後や新しい家具などを入れたあと1~2年ぐらいの時期に,直径1mmあるかないかぐらいの丸い小さな穴があけられたら,それはヒラタキクイムシによるものの可能性が高いと考えられます.
ヒラタキクイムシは,広葉樹材のうち,ラワンやナラなどの乾燥した材を食害する虫で,これらの木材の辺材部(丸太の外側の方の,樹種にもよりますが白っぽい部分で,白太とも言う.)の道管の中に卵を産みつけます.卵から孵った幼虫はおおよそ10ヶ月以上の間,辺材部に多いでん粉を栄養にしながら食い荒らしたのち成虫となり,前述のような穴をあけて出てきます.そして,外に出た成虫は10日ぐらいの間にまた,同じような場所に産卵しますので,このようなサイクルで被害が発見されることになります.
ヒラタキクイムシは,シロアリと違って先にあげたような樹種のうち乾燥した材の,でん粉の豊富な辺材部だけを好んで食べるというのが特徴です.
辺材部しか食害しないこと,辺材部でも幼虫の栄養となるでん粉は新しい材ほど豊富なこと,成虫は幼虫のえさとなるでんぷんを確認してから産卵すること,などから,被害は3年目以降終息に向かうのが一般的です.
また,ラワン材を用いた合板の被害も聞きますが,乾燥材しか食べないことや合板の製造工程から考えると,仮に産卵されるとしても製品となった後であり,辺材部しか食べないことからも合板を構成する薄い単板自体が幼虫のえさとしての食害の対象になることはまれであると考えられ,むしろ被害の多くは隣接する材から成虫が出てくる時の脱出孔としてあけられたものであると言えます.
成虫は合板に限らず,洗面化粧台やバスユニットなどの表面材のプラスチックなどでも,小さな穴をあけて出てきます.
このようなヒラタキクイムシの被害を防ぐため,ラワン材やナラ材などの製材,フローリング,合板類などには,JASの防虫処理(製材関係では「保存処理K1」という)製品があり,特に被害の多いラワン材などには,これらのJAS品の使用をお薦めします.
ただ,最近は健康志向などから,効果の高い防虫薬剤の使用が嫌われがちなことや,合板などでは(防虫薬剤ではありませんが多少その効果のある)ホルムアルデヒドの放散を抑える努力が各メーカーでなされていることもあってか,一時期あまり耳にしなかったヒラタキクイムシの被害をまた聞くようになっていることも事実です.
被害に気づいたら,虫穴や,できれば壁・天井などの裏側で本当に食害されている材の表面などに,市販の家庭用殺虫剤でかまいませんので,注入したり吹き付けたりしておけば,その後の被害は最小限に抑えられるはずです.(HY)