高温・高圧水蒸気処理とは?
木材の成分分離,変形の永久固定,木質ボード類の寸法安定性の付与,透過性の改善,加熱手段などとして,高温の飽和水蒸気処理が注目されている.
成分分離では,230℃で数分間の処理が行われる.処理により,ヘミセルロースは低分子化し,水可溶となり,リグニンは有機溶媒や希アルカリに可溶となるので,細胞壁の主成分であるセルロース,ヘミセルロース,リグニンを分離することができる.
変形の永久固定やボード類の寸法安定性向上には,180℃で数分間の処理が行われる.処理により,ヘミセルロース,リグニンがある程度低分子化し,また,セルロースの結晶性が向上する.これに伴って,内部応力が緩和し,変形の回復が飛躍的に抑制される.
透過性改善のためには,160℃以下の比較的温和な処理が行われる.処理により,壁孔閉鎖の減少,沈着物の除去,壁孔壁の軟化,圧力による壁孔破壊が生じる.加熱手段としての蒸気噴射プレスでは,さらに低い温度の水蒸気を使用する.プレスに開けた小孔から噴射される蒸気は,木質マットの内部まで瞬時に浸透し,接着剤が均一に加熱されるので,ボード類の製造に応用されている.(MN)