集成材のJAS規格での分類と性能評価について知りたい.
集成材は,その強度的なばらつきが小さいことなどから,本来構造的な利用を主に諸外国で発展してきた木質材料ですが,日本では従来,表面に美しい化粧薄板を貼った化粧ばり集成材(鴨居,敷居,長押などの造作材や見えがかりの柱など)としての利用がむしろ中心だったと言えます.
しかし近年,建築基準関係法規における大断面木材の耐火性能の再評価や,住宅施工後の木材の乾燥収縮に起因するクレーム対策等からその寸法安定性が改めて見直され,大壁工法の管柱や,梁・桁など,化粧ばりを施さない構造的な利用が大きく増加しています.
このような状況にも対応する形で,JAS規格においても平成8年に大幅な規格再編が行われています. 鴨居,敷居などに代表される「化粧ばり造作用集成材」や見えがかりの柱として使用される「化粧ばり構造用集成柱」,及び主として階段板やカウンターなどに利用されることの多い「造作用集成材」など,前述のような日本独特の使い方をする集成材に対しては「集成材の日本農林規格」として従来の規格を若干整理して踏襲し,一方,純粋な構造用の集成材については,大壁用柱など小断面の構造用集成材を,旧構造用大断面集成材規格と統合し,新たに「構造用集成材の日本農林規格」として一本化しています.
構造用集成材のJASには,同じ品質のひき板を積層した「同一等級構成集成材」と,外側の層ほど強いひき板を配置して積層した「異等級構成集成材」の区別があります.
異等級構成集成材は,梁等の高い曲げ応力を受ける部材で,構成するひき板を最外層・(外層)・(中間層)・内層用に区別し,最も応力が大きくなる外側(梁の上下面)に使うひき板ほど品質基準を厳しくしています.
異等級構成集成材の最外層~内層のひき板は,積層方向の中心から上下に向けて対称に配列する(対称構成)のが一般的ですが,上側と下側では下側がより強度を要求されることから,上側の層のひき板の基準を,下側の層よりやや緩くした「非対称構成」の基準も設けられています.
構造用集成材の強度性能は,曲げヤング係数(たわみにくさの指標:記号E)と曲げ強さ(破壊時の最大曲げ応力:記号F)の組合せで,「E○○-F○○」というように表示されます.
E-Fの等級は樹種やひき板の構成等により何種類もありますが,業界団体の日本集成材工業協同組合では,主に生産される構造用集成材(標準集成材)の強度等級を,下表のように示しています(抜粋).ただし,原木事情の変化等により,一般的に生産できる製品の強度等級や,その強度等級の製品を製造するための原料コスト等は変化していますので,詳しくは各メーカーとご相談願います.
標準的な構造用集成材の強度等級(抜粋)
区 分
主 な 樹 種
強 度 等 級
異等級構成
(対称構成)
ベイマツ,サザンパイン等
E120-F330
E105-F300
ヒノキ,ヒバ,カラマツ等
E105-F300
ベイツガ,ラジアタパイン,アラスカイエローシダー等
E 95-F270
スプルース,エゾマツ等
E 95-F270
スギ,ベイスギ等
E 75-F240
同一等級構成
(4枚以上の
ひき板を積層
したもの)
ベイマツ,サザンパイン等
E120-F375
ヒノキ,ヒバ,カラマツ等
E105-F345
ベイツガ,ラジアタパイン,アラスカイエローシダー等
E 95-F315
スプルース,エゾマツ等
E 85-F300
スギ,ベイスギ等
E 75-F270
なお、構造用集成材のJAS認定工場については,合板,フローリング,集成材等のJAS登録格付機関である(財)日本合板検査会の各検査所へお問い合わせ下さい.(
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