木材(特に伐採直後)を水中に貯蔵すると乾燥しやすくなると言われますが本当ですか?
昔から樹液出し(あくだし)といって伐採した木材を水中に入れて貯蔵したり,筏流しの際に木材を水中に浸してきました.近年水中貯蔵と乾燥の関係が検討され,水中貯蔵の期間中に辺材に細菌が進入し,細胞壁の一部が破壊され,これによって通気性の向上がみられ,乾燥の改善につながると指摘されています.なお,心材ではこの効果はみられないようです.
一方,古い書物1)には,辺材部に泥水等が進入し,変色や光沢を減ずるために,使用する場所によっては問題があると指摘されています.
ところで,辺材部分は細胞壁が細菌で破壊されなくても水分は容易に移動する性質があります.長期間の水中貯蔵で逆に水分移動の難しい心材部に水分が入ることによって含水率が高くなり,その後の人工乾燥で乾燥コストを押し上げることが懸念されます.
したがって,旧来から言われている工芸的な用途の木材には水中貯蔵は向いているかも知れませんが,辺材の色や光沢を重んじるスギ,ヒノキ等の針葉樹建築用材には幾分問題があるのではないでしょうか.木材乾燥の観点から考えると,水中貯木処理で乾燥時間は明らかに短縮しますが,貯蔵の場所や貯蔵時間(貯蔵時間に相当する時間内に高い含水率のスギ材でも天然乾燥で目的の含水率まで乾燥できます),作業量,材質変化等多くのことを総合的にみると問題が多く,今後検討を要します.
(YT)
参考文献
1)農商務省山林局:木材の工芸的利用,pp.127-126(1912)