木造建築物が火に強いとはどういうことですか?
木造建築には火に弱いというイメージがあります.
しかし,適切な断面を持った木材は意外に「耐火性がある」のです.断面が5×10cmの木の梁を,同程度の鉄やアルミとともに温度を上げていきながら強度の変化を観察したデータによると,
- 鉄は5分(約500℃)で加熱前強度の40%,10分(約700℃)で10%に,またアルミは3分(約400℃)で20%になり,5分以内に溶融する.
- 木の梁は,温度が上昇するにつれ徐々に強度は低下するが,15分(約800℃)以上になっても60%の強度を維持しており,はるかに鉄やアルミより丈夫.
木材は金属と違って高温でも軟化する事はありません.木材の強度が下がるのは,表面が焦げて,梁が細くなったからであり,木材内部の強度低下があったわけではありません.
特に,梁のように太い木材は,表面が焦げるだけで,内部まではなかなか燃えません(樹種によって違いますが,JIS-A1304の標準加熱条件では,炭化速度は0.6~0.7mm/分程度).
炭化した部分の熱伝導率は木材の1/3~1/2程度で,これが遮熱効果を発揮しますます燃えにくくしています.従って,木造建築は万一の火災時でもすぐに崩壊せず,避難時間を確保できるのです.
このことは,建築基準法でも認められていることです.
昭和62年に改訂された建築基準法では,このような大断面木材を使用した木造建築物の防耐火性能を評価し,一定の防火措置を講じた木造建築物に対し,木造建築物の高さ制限や,防火壁設置義務に対する緩和を認めています.
更に,「燃えしろ」が定められています.準耐火構造に用いる大断面木造の柱,梁に対し45分準耐火では35mm,60分,準耐火では45mmの燃えしろが定められています.
これらの値に基づいた燃えしろ設計と接合部の防火措置を行うことにより,火災による建物全体の倒壊を一定時間防ぎ,大規模な火災に至らない配慮がなされています.(KA)