木目模様は1/f(エフ分の1)ゆらぎをしているから見た目に自然で心地よいというようなことをマスコミで紹介していましたが,1/fゆらぎとは何ですか?
木材の板などに現れるまさ目模様を例にお話しします.
まさ目模様はご存知の通り,単純にいえば縞模様です.でも,よく見てください.縞と縞の間隔は揃っているようで,実は微妙に変化していることに気づくはずです.
そこで,まさ目模様をフーリエ変換という数学的な手法を適用して,どういう周波数で明暗の変化が起こっているかを調べてみます.ここでいう周波数とは,単位長さあたり何回明と暗の変化があったかを表します.細かい縞模様は「高周波数」であり,粗い縞模様は「低周波数」ということになります.
このとき,「様々な周波数の縞模様が重なり合ってまさ目模様が出来上がっている」という仮定をたて,どの周波数の縞模様がどのくらいの強さで混ざっているかを調べるのです.
このような解析を行って,横軸に周波数,縦軸に強さをとった2次元のグラフ(スペクトル)を描きます.このとき,両軸とも対数目盛にしておくのがポイントです.出来上がったスペクトルを見ると,全体的に右下がり,傾きでいうと-1,すなわち周波数(f)の逆数になっていることがあります.こういうグラフが得られる模様が1/fゆらぎをしていると呼ばれます.
風景のような自然な情景に対して上のような解析(スペクトル解析と呼ばれます)を行うと,多くの場合において1/f型のスペクトルが得られることが知られています.絵に限らず,川のせせらぎや,人間の心拍リズムなどについても現象が確認されています.ここから1/fゆらぎと自然さが結びつけられてきました.
まさ目模様に限らず様々な木目模様においても,スペクトル解析を行うと1/f型のスペクトルがよく得られます.でも,1/f型でない木目模様でも自然に見えます.つまり,1/fゆらぎは自然さを表すファクターの1つですが,それだけで自然さが決まるものでもありません.(MN)