木の種類の中で毒性があるものや,かぶれをおこす種類のものがあるかと思いますが具体的にどんなものがあるのでしょうか?
木も生き物ですから,自分に対して有害なものから守ろうとします.どんな木でもやっているのが,心材を作るという行為です.
丸太を切り口から見ますと,木は周辺部の2-3cmのみが白くなっていますがこれが辺材と呼ばれている木の若い部分で,水や栄養分を通しているところです.この部分のみが木で生きているところなのです.この部分は木も柔らかく栄養もあるので白蟻を始め黴や菌がもっとも好む部分です.
木としては食われてばかりでは倒れてしまいますので,表面部分以外は木の細胞の中に虫や菌に食われなくするためにフェノール類の物質を沈着させ赤味を帯びます(心材化).しかし死んでも木を支えることはできますので,心材は木を支えるだけのために存在していることになります.しかしさすがに死んでしまった心材でもそれが何百年も経つと腐ってしまって,木の真ん中が空洞になったりすることがあります.よく大きな木で真ん中が完全に腐ってからっぽなのに生き生きとしている木がありますが,樹体を支えるには周辺部が有効なので全く大丈夫なのです.肥大成長には樹皮のすぐ内側の形成層細胞が主役を担っています.
ところで,どんな木でも生き残るために毒が有効なら持ちたいのはやまやまですが,すべてうまく持てるとは限りません.しかし進化の過程でいくつかの木は持つことができました.ヒノキ(桧)のあの独特の匂いは黴をよせつけませんし,クスノキ(楠)の強烈な匂いは防虫剤として使われています.チークは木の中の独特のオイル成分が腐ることを防止しています.これらは広い意味では毒です.
木はその進化の過程で微生物と徹底的に戦ってきました.それ故,ほとんどの木の心材は微生物には敵対的です.しかし動物に関しては,木の実を食べて,種を運んでくれたり木にとっては持ちつ持たれつの関係でほとんどの場合は友好的な関係を結んできました.しかし中には動物に対して敵対的な行為をするものもあります.例えばうるしの木は‘かぶれ’ますし,桧系統の木は製材の時のオガ屑は喘息を起こしたり,人によってはかぶれたりします.アフリカ材のマコレという木は木の中にシリカを溜め込んで製材の刃物はボロボロにするは,オガ屑は猛烈なアレルギー反応を生じさせるはで,徹底的に自分が加工されることに抵抗します(しかし加工されてしまえば高級な家具に使用されたり,あきらめの早い木?です).
・・・ということで,我々が日常使っている木には広い意味での毒があります.しかし木材に使用されている防腐剤など人工的な毒と比べて木の毒というのは大きな違いがあります.基本的に木は自分を守れば良い訳ですから,防虫性は持っていますが,殺虫性は持っていないということです.例えば楠から作った樟脳をいつも洋服ダンスに入れていたから,体内に毒が蓄積されたり,漆職人は漆の毒が体内に蓄積されるということはありません.実際,製材所で朝から晩までオガ屑を吸っていた人が何年働いていても体を悪くはしませんが,石やセメントを扱っている人は長い間の労働で肺が機能しなくなったり防腐剤や殺虫剤を扱っている人が,段々その毒が体内に蓄積されそれが人体の器官を犯したり,ホルモンバランスを崩したりします.
(KN)